2016年12月はアメリカのFRBによる利上げが予想されています。トランプ大統領の当選が決まるまでは、利上げの可能性は高そうだけど実際は分かんない部分もあるよね、という状態だったのですが、トランプ氏の大統領当選を期にスタートしたトランプ相場によって、FRBとしても完全に利上げのタイミング到来、というモードでしょう。
ではFRBが利上げをしたら為替はどう動く?特に気になるのはドル円の動き。
2015年12月の利上げも入れれば、過去4回の利上げで円高3回、円安1回という状況。そう考えると、トランプ相場で上がりに上がったドル円相場も利上げとともに円高に方向転換か?
理屈の上ではドルが買われて円安となるハズのFRBの利上げ。今回も円高となるのか、それとも理屈通り円安となるのか。ご注目ください。
概要
2016年12月のFOMCでFRBが利上げを決定予定
トランプ相場ですっかり話題になることが少なくなりましたが、2016年12月にアメリカのFRBが利上げを予定しています。利上げを検討するFOMCは12月13日(火)~14日(水)の開催予定。14日の後の記者会見で「利上げします」と発表された後に、相場が大きく動くのがこれまでのパターン。
既に昨年12月にFRBは利上げを行っていて、今年中の利上げのタイミングを狙っていたところ、最後の最後の12月のタイミングで再利上げ、ということになりそうです。
夏ごろから既に12月の利上げは可能性大、と言われていましたが雇用指標には弱さも見られる、ということからヒョットすると年内の利上げは見送りカモ、と言われていた部分もありました。
そんな所に突如発生したのが、大統領選でのトランプ氏の当選。トランプ氏が当選したら、金融市場は大混乱、という事前予想とは裏腹に、トランプ氏の当選とともにアメリカを始めとする各国の株式市場は上昇を開始。ドルについても、一方向に買われる展開に。
気が付けばトランプ相場の様相を呈しており、事前の混乱の予想は何だったんだろう・・・、という状態になっています。
そんな訳で、金融市場もトランプ相場で潤っており、その後の経済指標も特段悪い指標は出ておらず、FRBによる12月の金利引き上げが現状では確実視されています。
FRBが利上げをしたら為替、特にドル円はどうなる?
トランプ相場のおかげで101円付近から一気に110円台まで駆け上がったドル円市場。トランプ氏の当選の暁には大幅な円高に見舞われる、という各方面の予想は見事に外れてしまいました。しかしさすがに10円近く上げたドル円市場、111円到達後は一息入れた状態であり、更なる上昇にはやや力不足の感があります。
そして金融市場で次に控えている大きなイベントが12月のFOMCによる利上げです。為替相場はイベントをエンジンに動きが始まる傾向があるので、トランプ相場が一服すれば、その後しばらく値動きの停滞が続き、次の大きなイベントともに相場が動き出す、と考えるのは極めてオーソドックスな考え方です。
ただし問題はFRBによる利上げで相場が動くとして、動く方向は上か下か?、という点。まぁこれが100%当てられれば、皆大富豪になってしまう訳ですが、何かしらの手がかりはあるハズ。
まぁ難しく考えなくとも、過去のFRBの利上げの際にドル円市場はどう動いたのか、をトレースすればアバウトな傾向はつかめます。そんな訳でデータが取れる1994年以降のFRBの利上げの時期とドル円チャートの関係を調べてみました。
FRBの利上げ4回のうち3回は円高に
1994年以降のFRBの利上げは4回行われています。
・1994年2月~1995年2月(4.75%→6.5%)
・1999年6月~2000年5月(3.0%→6.0%)
・2004年6月~2006年6月(1.0%→5.25%)
・2015年12月~(0.25%~)
※金利の最初の数値は利上げ前の数値を記載、現在の金利は0.5%)
あら意外に少ないのね・・・、という感じもしますが、それでも過去約20年のデータなので参考にはなるでしょう。
ハイ、ではお立合い、上記のFRBの金利引き上げ期間をドル円の月足チャートに記してみました。
厳密な計算はしませんが、人間の優れた能力であるパターン認識能力を遣えば一目瞭然。
過去4度のFRBの利上げによって、ドル円市場は3回は円高安、1回は若干の円安という結果。
尚、4回目は今のところは現在進行形ですが、昨年12月の金利引き上げを契機に円高に相場が振れたのを覚えている方も多いのではないでしょうか?よって円高に入れています。
理屈通りに動かないのが相場、ただし過去のデータは参考になる
理屈で言えば、FRBが利上げをすれば、世界中から金利の高いドルに資金が集まってドルは高くなる→ドル円でいえばドル高円安になる、となるのが普通ですが、そこはさすが相場、理屈通りには動きません。
相場解説的に言えば、金利を上げる、というアナウンスはFRBは実際に金利を上げる前からアナウンスを行うので、金利を上げる際には材料出尽くし、ということでドルは売られた、ということになります。
2004年6月~2006年6月の利上げの際は、若干円安になっており、この場合は理屈通りに相場が動いた、と言えますが、それでも他の3回と比べるとそれほど相場が動いていないので、少なくとも、過去4度のFRBによる利上げではドル円相場は円安になりにくい傾向にある、とは言えます。
2016年12月のFRBの利上げはほぼ確実と言える状態。その後のドル円市場がどう動くか、実際なってみないと分かりませんが、過去は意外にもドル円は下げている(円高ドル安)、ということを知っていれば、その後の相場展開を考える上で参考にはなります。
トレードも突き詰めれば、確率や期待値の世界になります。トレードの確率を上げる際に、過去の似たような状況の時に相場がどんな動きをしたのか、ということを知っておくのは、トレードの確率を上げる大切なデータと考えます。
まぁ、けど外れたらスパッと損切する勇気は必要不可欠です。ここはお忘れなく。
トランプ大統領誕生でFRBは利上げをせざるを得ないような・・・
市場との対話を重視するFRBは、ある日突然サプライズ的に利上げを発表、ということはやりません。そんなこともあり、12月の利上げはほぼ確定、と考えられます。
ついでに言えば、予想外のトランプ大統領の誕生によって、新政権がFRBに対して厳しい姿勢で臨んでくる可能性も予想されます。中央銀行と政府の対立は、世界中のどこでもある風景ですが、ここしばらく大人の関係を築いていたアメリカ政府とFRBの関係からすれば、ちょっとした地殻変動の可能性があります。
今後のFRBの運営を考えれば、今回金利を上げておくと、その後は金利を下げる、という選択肢を手にすることにもなります。これって、政府対応とすれば格好の武器となります。トランプ政権下での経済状況がどうなるか分かりませんが、仮に景気が悪化した場合、今回利上げをしておけば利下げの余地が発生します。今回金利を上げないまま、景気が悪化すれば2015年12月の金利引き上げ分の枠はありますが、それを使い切ったらお終い。今回利上げしておけば、2回分の枠ができることになります。
トランプ氏はFRBイエレン議長はクビだ、的な発言もしており、トランプ大統領の誕生はFRBとしても、厄介な問題となる可能性があります。
まとめ
相場の今後を占うには、過去の復習から、ということで12月に予想されているFRBの利上げについて、過去の利上げ後の為替相場からドル円を取り上げてみました。
FRBが利上げしたらドル円は下がる可能性が高い、と頭から信じ込むのは危険ですが、過去は下がることが多かった、と知っておくことは大切。丁半バクチではありませんが、どちらに賭けたほうが期待値が高いのか、ということは知っておいて損はありませんn。
2016年の為替相場は、FRBの利上げが最後の大イベントとなります(突発的なイベントが発生しなければ)。トランプ相場でドル円も一気に吹き上がっているので、FRBの金利引き上げを契機に下がる、と考えるのはそれ程変ではないと思いますが、さてどうなりますか。
2017年の金融市場の行方を占う上でも、FRBの利上げそしてその後のドル円相場の動きに注目したいと思います。
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