2015年3月に発表されたファミリーマートとサークルKサンクスとユニーを傘下に持つユニーグループHDの経営統合(合併)、やはりというか何というか、一筋縄では進んでいないようです。
難度の高い統合だよなぁ、と思っていた両者の経営統合。2016年9月の経営統合発表(2015年10月15日)までは進みましたが、経営統合の具体的な作業はこれから。今後統合が苦労すると思われる原因を、改めて考えてみます。(2015年10月16日更新)
概要
ファミリーマートとサークルKサンクスの統合について
3月に発表されたコンビニのファミリーマート(以下、ファミマ)とサークルKサンクスの統合、正確にはユニーグループHDとコンビニ部門のサークルKサンクスと、スーパー事業のユニーを有する愛知県の会社と、ファミリーマートとの経営統合になります。
日本のコンビニ業界は首位を独走するセブン・イレブンを除けば、完全に再編モード。特に2番手と3番手のローソン、ファミマが再編に積極的で、各コンビニに出資を行っていたりします。そんな状況下で、お互い伊藤忠商事を株主に持つ、ファミマとユニーGHDが経営統合する、と発表されています。
ただしユニーGHDは、単なるコンビニ会社ではなく、繰り返しますがサークルKサンクスというコンビニとユニーというスーパーを中心とする持ち株会社。7&iHDの愛知県版みたいなものです。
そしてファミマと統合の暁には、コンビニ事業とスーパー事業を持った持株会社として再出発の予定。形の上では、ファミマによるセブン追撃態勢の完成、ということになります。
しかしながら、ファミマとユニーGHDの統合、少し考えるだけでも2つの大きなハードルが控えています。
ファミマとサークルKの統合問題①、FCの統合が大変
コンビニのビジネスモデルは、本部が商品開発と製造を行って、お客さんにモノを販売するのはFC店という仕組み。お客さんと直接接するのは、コンビニ本部ではなくFCの店舗。そしてFC店を運営するのは、当然社員ではなくコンビニオーナー。コンビニオーナーといえども、立派な社長です。
コンビニ本部は身軽な反面(そりゃ普通の小売りより利益率高くなります)、店舗を運営するのは独立したオーナーであり、お店で何かしようとした場合、基本的に指導やお願い、という形になります。
例えば、スーパー同士の合併なら、お店の看板架け替えてイッチョアガリ、となりますが、FCの場合はそうはいきません。本部が合併するから店名が変わります、となっても一筋縄では行きません。別に今のままの商号で結構というオーナーもいれば、出すもの出してね、というオーナーもいるでしょうし、じゃぁもう運営やめる、というオーナーもいるでしょう。本部が合併しても、個別の店舗をどうするかは、次の問題。本部がブランドを変える、と決断しても、FC店のオーナーがNOと言ってしまえば、そこでSTOPせざるを得ません。
コンビニ本部も兵糧攻め等、最後に苦い薬を飲ます手段は有しているでしょうけど、最初は基本的にはお願いベース。業務命令が効く、普通の会社とは違います。
よってFC店の説得しながら経営統合を進めることになり、スピード感はどうしても落ちてしまいます。
尚、下記記事で各コンビニ毎のロイヤリティー等まとめてみました。
ファミリーマートは「FC加盟料400万円+ロイヤリティ48%」に対して、サークルKサンクスは「FC加盟料250万円+ロイヤリティ37%」となっています。
関連記事:コンビニ銘柄保有者は必見!各コンビニのFC加盟金、ロイヤリティー、店舗数一覧
東海地区では強いサークルK
ファミマとサークルKサンクスを比べた時、確かにファミマの方が規模はデカイのですが、こと東海地方に限って言えば地盤としているサークルKサンクスの方が立場は上。両社のブランドを今後どうするか分かりませんが、そのままならまだしも、ブランド統合と言うことになれば、サークルKサンクス側で揉めるのは必定。
特にサンクスはFCの離反が相次いでおり、火に油を注ぐ結果になりかねません。本部とFC間のゴタゴタで、FCが店ごと他のコンビニに移りました、なんてことコンビニ業界ではそれ程珍しいことではありません。よってコンビニ本部も、簡単にはことを荒立てることはできません。
ファミマはかつてam/pmの統合を行っており、コンビニ統合のノウハウは有していると思われますが、am/pmは正直苦しいコンビニ会社で、更にファミマがお金を出してM&Aして子会社にした、という経緯があります。
よってファミマとam/pmの統合は、ファミマ中心にスピード感を持って進めることができましたが、サークルKサンクスで同じようなことをしたら、間違いなく揉めと思われます。
金城湯地の東海地区のサークルKのFC店が、丸ごとセブンに行ってしまった・・・、何て可能性だってありえます。
更に言えば、サークルKサンクスという名前のように、サークルK側も2つのコンビニが共存している状態。サークルKとサンクスが経営統合した際に、もう2度と統合の仕事はコリゴリ、とサークルKの方が以前見たTV番組で仰られていましたが、更に今度はファミマと統合となれば、再び大変な作業を行うことに。
サークルKが東海地方では強いだけに、ファミマとサークルKの統合、そう簡単にスムーズに進まないと考えられます。
ちなみに東海地方の会社の統合例で言えば、三和銀行と東海銀行の統合は、東海地方の方には忘れられない出来事。名古屋のお殿様・東海銀行が、まさか関西商人の三和銀行と統合するとは正直驚きでした。(最初はあさひ銀行も一緒でしたが、途中で脱出)
客観的に、うまくいかないだろうなぁ、と思ったら案の定その通りの結果に。三和銀行が東海銀行勢力を排斥した結果、三和銀行がどうなったか・・・。東海地区は金持ちの企業が多いので、あの金融危機の時に、みずほ銀行のようにUFJ銀行も1兆円増資的なことすれば、今もUFJ銀行は残っていた可能性もありますが、旧東海銀行勢の惨状を目にしていた名古屋財界はUFJ銀行を見限ったとさ。オシマイ。
と言うことで、全国的な勝負は無理でも、地元では十分戦える戦力を有している東海地区の会社、東京勢や関西勢が舐めてかかると大変なことになります。
けどね、今回のファミマとサークルk=ユニーの統合、東海銀行と三和銀行の統合とイメージが重なる部分があるんだよなぁ。
関連記事:ユニーとファミマの合併、ユニーは東海銀行になってしまうのか?
ファミマとサークルKの統合問題②、スーパーのユニーが苦戦中
かつては東海地区では圧倒的とも言える存在感を誇っていた大手スーパーのユニー(現在はアピタとピアゴという店名)。しかしながらこのユニーが現在苦戦しています。
振り返ってみれば、大手スーパーという業態はイオンもヨーカドーも苦戦している訳で、ユニーだって苦戦するのは例外ではありません。下記に10年分のユニーの売上と利益の推移を5期分ピックアップしてみました。
ユニー自体確かに直近の15/2期当期純利益は赤字ですが、赤字は店舗の減損等を特別損失で計上したもの。本業は黒字が続いています・・・。
が、問題は売上が減少して、当然利益も減少しており、完全にジリ貧モードに突入している部分。140~190億円あった経常利益、ここ2年で約1/2とも言える100億円レベルまで低下しています。
ついでに言えば、過去も継続的に特損を計上し当期純利益が圧縮されており、前から楽ではなかったのね・・・、ということが分かります。
一緒に作ったのが、サークルKサンクスの5期分の推移。
2011/2期の段階で利益ベースではすでにサークルKサンクスがユニーを上回っています。これは意外でした。
ただしサークルKサンクスの利益もジリジリと下がってきています。
いずれにしてもユニーもサークルKサンクスも、両社ともに何か手を打たないとマズイよね・・・、という状態になっています。
その意味では、ファミマとの統合、問題解決の魔法の杖に見えなくもないような・・・。
サークルKサンクスはコンビニ業界の優勢劣敗、と言うことになりそうですが、まさかユニーがこんな状態になっているとは、少々驚き。
元々東海地区のイオンモール的存在のユニーですが、気付けば東海地区にもイオンモールが多数出店。完全にお客さん奪われてしまいましたね。各地で大きな影響を与えたイオンモールの全国出店ですが、元々土日のファミリー向け買い物客をターゲットにしていたユニーへの影響は甚大だった、という結果でしょうか。
管理人、某東海地区のイオンモールでコーヒー屋の「カルディ」見た時は驚愕しましたから、田舎で東京と同じものが買える・・・、と。そしてカルディーの無料コーヒー飲むのに、列をなしている光景、各所の「カルディ」に行きましたが初めて見て、これも驚きでしたが。
成功モデルはありますが・・・
確かに7&iが持ち株会社にコンビニとスーパーをぶら下げて成功しており、成功のモデルは存在している、と言えます。しかしながらファミマとユニー+サークルKサンクスが統合すれば、それがそのまま通じるかどうかは別問題。
7&iもスーパーのヨーカドーは苦戦が続く中、ユニーがファミマと同じ持ち株会社になっても、それが魔法の杖となって問題解決、ということにはならないでしょう。
正直な所、ファミマの側からすれば、欲しいのはサークルKサンクスであり、ユニーはいらない、と位に思っていてもおかしくありません。何せファミマにスーパーの経験はないのですから。
ただでさえ、FCの説得に莫大な労力がかかるのが目に見えているファミマとサークルKサンクスの統合に、更にユニーの立て直しも重なるとなれば、もう少し時間をみましょう、ということになりあますね。
少なくともファミマの側は、先にユニーを立て直してください・・・、というスタンスではないかと。
ユニーはリストラをするのか?出来そうで出来ないその決断
企業が業績を立て直すのは、古今東西良くも悪くもリストラが一番早いです。昨今の状況を考えれば、ユニーが人員削減を含むリストラ、という言葉が出てきてもおかしくは無い状況。
東海地区の企業って、殆どリストラしないイメージがありますが、遂にユニーでリストラ砲を発射?
けどね、ユニーで働く殆どの人が東海地区の地元の人。地方企業のリストラ、自動車のマツダのリストラも苦労話が色々と流れましたが、世界が狭いだけに大変。
仮にユニーがリストラとなったら、本人+家族そして親類はもうユニーで買い物しなくなるよなぁ。食材は地元のスーパー、土日はイオンモールで事足りる訳ですから(東海地区は完全なる自動車社会ですし)。ユニーと言えば、地元では古くから名前の通ったスーパーなので、リストラ=評判がガタ落ちになるリスクがあります。ここが都会の会社のリストラとの最大の違いではないかと。(スーパーという特殊例でもありますが)
しかしながら、ユニーの立て直しはどうするよ?、というのはファミマとの統合があろうとなかろうと、必須でしょう。ユニーの経営陣は非常に深い悩みの中にいるのではないかと。
そして、ユニーは遂に店舗のリストラに踏み切るようです。最大50店舗、全体の1~2割の店舗の削減が言われております。
「ユニー:店舗閉鎖検討 ファミマとの経営統合、交渉前進狙う」(毎日新聞)
ファミマとユニーGHDの株価
今の段階では、経営統合の合意の延期、という段階のファミマとユニーGHD。5年分の株価推移は下記のようになっています。
関連記事:ファミリーマート株価の今後の見通しと予想
ファミリーマートは順調に株価が上昇していますが、ユニーGHDは500~1,000円の間を株価が行ったり来たり。アベノミクス相場の恩恵を殆どこうむっていない銘柄となっています。
株価の値動きではファミリーマートとユニーGHD、明らかな差が発生しています。
両社の株主・伊藤忠商事も悩んでいそう
ファミマの筆頭株主は伊藤忠商事、というのは有名なお話。そして伊藤忠商事はユニーとも提携関係にあり、第3位の株主となっています。そしてファミマとユニーの統合、伊藤忠商事が取り持った形となっています。
婚約発表はしたものの、イザ結婚式を挙げるまでには課題が山積。
コンビニ統合の苦労は覚悟していたものの、、スーパーのユニーの苦戦にさてどうしたものか・・・、という状況かと。
M&Aって、なかなか思った通りに行きませんが、コレが普通。うまくいったM&Aの方が、数は少ないんですから。
伊藤忠としては、両社が統合して、伊藤忠が調達した食材等をバンバン仕入れてもらって・・・、というシナリオだったのだろうと推察しますが、それが実現するのはまだ当分先になりそうです。
まとめ
ファミリーマートとユニーGHDの経営統合、結構難易度高そうだなぁ、と思っていましたが、改めて調べて見ると、やはり難易度高しです。
コンビニの統合は時間をかければ何とかなりそうな感もしますが、ユニーの再建が思った以上に大変そうです。何せ、イオンもヨーカードーも処方箋を持っていないのですから。そして安直にリストラ、という手段も取れない状況。
2015年10月15日にファミリーマートとユニーHDの正式な経営統合がは発表されました。2016年9月の経営統合の予定。けど具体的な作業はまだこれからの段階。
果たしてファミマとユニーの統合は、今後どうなって行くのでしょうか?
PS コンビニ各社のFC加盟金、ロイヤリティー、店舗数一覧を作ってみました、よろしければ合わせてご覧ください
「コンビニ銘柄保有者は必見!各コンビニのFC加盟金、ロイヤリティー、店舗数一覧」