遂にシャープは産業革新機構入りか?、というニュースが大きく報じられるようになってきました。再度の経営危機後、立ち直りの気配が見えてこないシャープ。やはり機構の軍門に下ってしまうのか?
産業革新機構の傘下入りが、経営再建は一番進みそうな感もありますが、シャープの場合、一筋縄では行かない可能性も。それに、機構入りということは、将来的な実売りがほぼ決定。
今後シャープはどうなるのか?産業革新機構がシャープを子会社化したら株価はどうなる?
シャープの再生、産業革新機構入り後の第2幕も簡単なサクセスストーリーとはならないと、考えられます。 (2015年12月2日更新)
概要
シャープも産業革新機構送り?
産業革新機構って、基本的には経営破綻したor破綻しそうな会社に出資して経営再建を行うというのがミッション、ただし建前(?)としては革新的な技術を持つ会社に投資する、ということになっています。そして連休中に出ていたのが下記。
「シャープ本体に最大2000億円 革新機構が出資検討」(産経新聞)
過去はシャープが(中小型)液晶部門を切り離して、そこに産業革新機構が出資して・・・、と報じられていましたが、遂に産業革新機構がシャープ本体に出資、という方向になってきました。そーかシャープも産業革新機構送りか・・・。
経営再建計画のスタート直後の第1四半期から赤字計上で、いきなり経営再建計画に黄色信号が灯っているシャープですが、9月中間期も赤字で、再建計画の見直しはせざるを得ない状況。
これまでは液晶部門の切り出したとしても過半数の出資にこだわっていた様子のシャープですが、もうそんな余裕シャクシャクな態度を取っている状態ではなくなってしまったのか?
シャープの再建計画、要は中国でスマホ用液晶売ります、というのが柱の計画でしたが、中国経済の失速で数字もさることながら再建計画のシナリオ自体、に治しを余儀なくされます。
関連記事:中国のスマホ市場が失速、シャープやJDIは大丈夫?
スタートから躓く再建計画って一体?、と思わざるを得ませんが、それはさておき、シャープ本体に産業革新機構が出資検討をせざるを得ない程、シャープはシンドイ状況となっている可能性もあり、もしそういう状況であれば、由々しき事態と言わざるを得ません。
尚、産業革新機構の詳細は下記をご覧ください。
最近のシャープの株価推移
ここ2年のシャープの株価は下記のように推移しています。
シャープ株価推移
142円という絶対防衛ラインをアッサリ下にブレイクして、今は底値を探しの緩やかな下落トレンド状態。チャート的にはそう簡単に上昇トレンド入りできるような状態ではありません。
産業革新機構主導のシャープ再建が一番進みそうではある
客観的に見てシャープの再建計画は修正を余儀なくされそうで、液晶を始めとして事業の選択と集中は避けられそうもありません。場合によっては、先日既に行っている人員削減をもう1回という可能性も。
こう言った場合、外部の客観的な視点に基づいて選択と集中他の外科治療を行うのが一番合理的。
その意味では、産業革新機構がシャープに出資して機構が主導してシャープを再建するのが一番早いと思われます。何せ産業革新機構はリストラとか企業再生の専門家集団ですから。
シャープ自身では人員削減以外、殆ど手を付けていない訳で、そこを産業革新機構が主導することで経営再建は一気に進む可能性があります。懸念の液晶部門も切り出して、産業革新機構が主導権を取って・・・、ということになれば、これまで長らくあーでもない・こーでもないと言っていたシャープそして国内の液晶事業の再編が一気に進むことになります。
先生=革新機構に指導してもらうのが一番話は早そうですが・・・
シャープの当事者能力はどこに?日産と同じ道を歩むのか?
確かに産業革新機構がシャープ本体に出資して・・・、というのがシャープの再建は一見一番進みそうに見えます。
けどね、それでいいのか?、と思ってしまいます。そうなってしまうと、そこにシャープの意志はあるのか?
産業革新機構の主導の話というのは、シャープ自身は黙って言うこと聞いておきなさい、という話。企業再生ってまぁそんな所ではありますが、シャープの当事者能力って一体?、ということになります。
シャープが経営的に苦しいのは分かりますが、まだシャープは経営破綻した訳でも倒産した訳でもありません。外野から見ると、産業革新機構に出資してもらって・・・、となれば話は色々と進むでしょうけど、それってそもそも自分達で出来ないものなのか?
簡単に言えば、やることが分かっているなら自分達でやったら?、ということ。それができれば苦労は無いよ、との声もありそうですが、となると必然的に他人の手で行うことになります。
ハイ代表例は日産でありました。ルノーにお金を出してもらって再建できた日産ですが、破綻の前に既に実行すべきメニューは出来ていたのに実行できずこの事態になった、と後から随分言われていましたので。
このままだとシャープは日産の轍を踏みそうな感がありますが、さてどうなりますか。ただしもう、時間切れかもしれません。
ちなみに産業革新機構の会長は元日産COOの志賀俊之氏。不思議な巡りあわせ、と言わざるを得ません。
産業革新機構が出資の場合のシャープの株価について
企業の再生にファンドが関与の場合、①減資とセットで増資を引き受けてお金を入れる、②優先株という形で増資を引き受けてお金をいれる、という2パターンがあります。
減資とセットで増資→シャープは可能性低いと考えられる
減資とセットと言うことは、既存の株の価値を減らして、1から資本構成を見直す、ということになります。当然、既存株主の価値は大幅に既存して、株主としては怒り心頭、ということになります。けど実際JAL、新生銀行は100%減資の上で再生ファンドがお金を入れています。
ただしJAL、新生銀行は債務超過で実質的に破綻状態だったのに対し、苦しいとはいえシャープは今の所、債務超過には陥っていません。よって、劇薬とも言える減資とセットでの増資という選択肢、シャープの場合は取らない可能性が高いと考えられます。
優先株で産業革新機構はシャープの株を引き受け、ただし株価は市場価格より割安
シャープに産業再生機構がお金を入れる際は、ルネサスエレクトロニクスの例が参考になると考えられます。
ルネサスは優先株という形で、通常株価より割安の価格で機構及び取引先が増資を引き受けています。今の所、苦しいながら債務超過に陥る等もう財務的に終了している、といった状態ではないシャープ、これが一番取りやすい選択肢。
シャープは上場を維持したまま、産業革新機構は上場株価より安い株価で増資を引き受ける可能性があります。
問題は借入金が6,000億円以上あるので、銀行には債権放棄で泣いてもらう必要がある点。けど機構入りしなければ、このままシャープが沈んでいくのを指をくわえて見るしかない銀行にとっては、ある程度の債権放棄はやむを得ない判断。問題は、どこまで債権放棄を飲むかではないかと。
産業革新機構入り後のシャープの株価について
産業革新機構入り後のシャープの株価についてですが、これはもうチャート屋の出る幕ではありません。
産業革新機構の傘下入り後のシャープの株価は、シャープの再建が成功するかor失敗するかの世界。
シャープの再建は成功する、と考えるのであれば機構に乗っかって、後はよい結果を待つだけ。シャープの再建は、さすがの機構でも難しい、と考えるのであればスルーがベター。
ルネサスの再生はうまく行きつつありますが(あくまでも再生という観点、機構の保有株の売却=EXITという観点で言えば、成功確定とは言えません)、ルネサスは下請け型の企業で、取引先の協力を得ることができた部分が大きいです。ビジネルモデルを考えると、シャープとルネサスを同列で語ると、大怪我する可能性があります。
ルネサスと産業革新機構の関係については、以前の記事を合わせてご覧ください。
産業革新機構出資後のシャープはどうなる?
産業革新機構がシャープに出資した後、シャープはどうなるかと言えば、企業再生の専門家によって徹底的に選択と集中、そしてリストラを行うこととなります。
シャープの看板とも言える液晶部門は切り離されて、ジャパンンディスプレイ(JDI)と一緒になる方向では?
JDIは実質的に産業革新機構=経済産業省の傘下なので、国営液晶会社の完成!、となります。どんな形になるかはさておき。エルピーダの二の舞にならぬよう、願うのみであります。
液晶以外の部門も不採算事業は閉鎖、売却を余儀なくされるかと。
産業再生機構の手がけた案件、ルネサスエレクトロニクスは下請け型の企業で、トヨタ始め取引先が株主にまでなって支援した結果、再生が軌道に乗りつつありますが、シャープは一般消費者相手の商売且つ海外企業相手の商売が多い訳で、産業革新機構入りしたからと言って、シャープの言うことを聞いてくれる相手ではありません。
更に本業=液晶事業自体がフラフラな訳で、再生ファンドとしても相当難度の高い案件と言えます。その意味ではシャープの再生は、産業再生機構の鼎の軽重が問われる案件ともなりそうです。
最終的にシャープがどんな形になるかは分かりませんが、随分と小柄な会社になるのは間違いなさそうです。
中堅家電メーカー的存在になる可能性が高いかなぁ、と思わないでもないですが、この20年は実は中堅家電メーカー淘汰の歴史です。そんな中で、いくらシャープの再生ができたとしても、中堅家電メーカーとして生き残るというシナリオは、家電好きの目から見ても、正直難しいのではないかと。
産業革新機構の資金を入れる=最終的には身売り、と言うことになるので、シャープは中堅メーカーで独り立ちというより、最終的にはどこかのメーカーの傘下入りする可能性が高いと考えられます。
産業革新機構の出資=将来的には身売りの可能性大
産業革新機構に限らず再生ファンドが出資するということは、将来的には引き受けた株を売却する、と言うことになります。
再生ファンドが出資ということは、大きな金額、株主シェアで言えば少なくとも2~3割の出資となる訳で(過半数以上の出資のケースが大半ですが)、となると再生の後、その引き受けた株をどうするのよ?、と言うのが真っ先に問題になります。
再生ファンドは殆どの場合、出資と出口(EXIT)をセットで考えますが、殆どのケースはEXITは他社への転売、当事者から見るとどこかの会社の子会社化、となります。
シャープの場合、同じ関西に三洋電機というモデルケースがあります。三洋電機は三井住友銀行と大和証券の再生ファンドが再建を果たして、パナソニックが三洋電機を子会社化。そして現在=三洋電機はほぼ消滅、に至っています。
実は液晶部門の再建も一筋縄ではいかない可能性が
仮にシャープから液晶部門を切り離して、もう経営は産業革新機構+JDIに任せます、となればバラ色の世界が待っているかといえば、どうやらそうは問屋が卸してくれなさそうです。
スマホは世界中にほぼ行き渡った感があり、急速に拡大した中国のスマホ市場も、経済の低迷もありさすがに今後急激な伸びは期待できません。シャープは車載型液晶(スピードメーター等)に期待しているようですが、数年先はまだしも、目先スグにどうこう、という話ではありません。
JDIとの事業統合が一番シナリオ的には「あり」ですが、実は独占禁止法の壁もあったり。特に中国政府が独占禁止法を盾に何を言ってくるか読めません。
更にJDIの頼みの綱のスマホ向け液晶、アップルが有機ELディスプレイの採用を表明しており、JDI自体液晶のみではやって行けない可能性も。有機ELの製造ライン揃えるにはまたお金が必要。LGが1兆円投資すると表明している訳で、有機ELの設備投資を行っても、スグその先に激烈な価格競争が待っています。(詳しくは下記をどうぞ)
まとめ
どうやら産業革新機構の傘下入りが、刻々と近付きつつあるシャープ。
果たしてシャープは今後どうなっていくのでしょうか?家電好きの管理人、シャープの1日も早い再建を願っていますが、家電好きなだけに、産業革新機構の傘下に入る=シャープの再生成功、という簡単なことにはならないだろうなぁ、と思います。
シャープがどうなって行くのか、今後も興味深く見守ろうと思います。
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