中国系企業がジャパンディスプレイ(JDI:6740)に600億円の出資を検討と報じられています。キャッシュ・フロー計算書を見ると、現状では年間約600億円のニューマネーが必要なJDI、今期は既に350億円を増資で調達していますが、残りは600億円とは言わないまでも250~300億円の調達が必要です。
ただし中国系企業の出資には、米中貿易摩擦の真っ最中であり、最大顧客であるアップルにそっぽを向かれるリスクもあり、非常に難しい立場にJDIは置かれています。
JDIの液晶が搭載された期待のiPhone XRが売れておらず、一方で中国系企業からの出資受け入れはアップルとの関係に影響を与えるリスクがある中で、JDIは今後どの方向に進むのでしょうか?
・JDIの最新の記事は下記となります
→ジャパンディスプレイ(JDI)への公的資金の未回収金は約2400億円
概要
中国系企業がJDIに約500億円を出資の方向で検討中
新体制発足前に空中分解してしまった産業革新投資機構(JIC)ですが、前の体制(詳しい体制の説明は省略)の際に投資してIPOまでしているジャパンディスプレイ<6740>の存在を忘れてはいけません。IPO後ほどなく下方修正を出して、政府系ファンドの大口投資先がIPOゴールさせて何やってんだか、となった同社ですが、その後も業績の回復はままならず、ついに中国系企業が約500億円を出資の方向で検討中の様子。
うーん、遂にここまで来たか・・・、という感じではあります。JICが全取締役退任でゴタゴタしてますが、実はこちらの方が重要度は上だったり。
JDIの液晶を搭載した期待のiPhone XRは売れず
色々やってきたものの結局JDIの主力顧客はアップルで変わらず、現行のiPhone XRの液晶はJDIが提供している様子。iPhone XRが売れてくれれば、JDIとしてもホッと一息つくことができるのですが、現状iPhone XRはNTTドコモが登場後すぐに値引き販売を始めるなど、不調です。廉価型のiPhoneとは言え、金額計算すると7~8万円の高級機のiPhone XR、その昔の廉価版として世に出るも売れなかったiPhone5 Cと同じ運命をたどるのか?
いずれにしても期待のiPhone XRが空振りに終わりつつあり、JDIとしては次の手を打つ必要が出てきています。
JDIは車載液晶等、モバイル以外の事業展開に注力していますが、まだ道半ばの状態。それでもQ1でモバイル比率約6割なので、脱モバイルで頑張ってはいます。しかし売上の半数以上を占めるモバイル事業がパッとしなければどうにもなりません。
ファーウェイショックも逆風で株価は底が見えない状態
米中貿易摩擦の結果、アメリカはファーウェイを自国のみならず同盟国からも締め出す措置を発動。日本政府もまずはファーウェイ製の基地局を使わないよう携帯キャリア3社にお願い(実質的には命令ですね)しており、これまで破竹の勢いで成長を遂げたファーウェイは完全に海外展開の芽が摘まれています。
現状、国内では基地局の話に留まっているファーウェイのハード問題ですが、そんな状況下では端末の販売も伸びません。JDIにとってアップルほどではないにしても、ファーウェイは重要なお客さん。アップルのiPhone XRの不振に加え、ファーウェイに対する逆風。JDIにとってはモバイル事業が踏んだり蹴ったりの状況となっています。
そんな訳でJDIの株価は底が見えない状況。政府系ファンドが主導した会社が上場ゴールになってますが、ホント何やってんだか、という状態です。
・ジャパンディスプレイ株価-週足チャート
「画像出典:マネックス証券/日本株取引ツール トレードステーション」
※関連記事:マネックス証券のトレードステーション発表会に行ってきました
赤字が続くJDI
なかなかよい話が聞こえてこないJDIですが、これまでの決算は下記。
2016年3月期 売上高9891億円、経常利益▲129億円、当期純利益▲318億円
2017年3月期 売上高8844億円、経常利益▲89億円、当期純利益▲317億円
2018年3月期 売上高7175億円、経常利益▲937億円、当期純利益▲2472億円
18年9月中間期 売上高2143億円、経常利益▲190億円、当期純利益▲95億円
上記の決算を見ると、正直しんどいなーと思わざるをえません。3期連続の赤字に加えて(2015年3月期は経常利益は黒字で当期純利益は赤字)、今期も中間期は赤字。もう抜本的になにかしないとダメな状態。
しかし旧体制の際に革新機構は追加で資金支援していますが、完全に溶けてますね・・・。切れる判断はとれなかったでしょうが、これだけの赤字の前では官民ファンドの資金といえども、一時的な避難資金にしかならないのが現実。お金の問題でどうこうできるステージではなくなっているかと。
今振り返るとJDIがシャープ買わなくてよかったのでは?仮にJDIがシャープを買っていたら、親子まとめて二次破綻なんて可能性も出ていたりします・・・。
資金繰りも大変、キャッシュ・フロー計算書を読む
慢性的な赤字が続いているJDIですが、資金繰りも大変。財務活動によるキャッシュ・フローにそれが表れています。
2018年3月期は短期借入金734億円でしのぎ、2017年3月期は短期借入金251億円・長期借入金300億円・社債発行450億円でしのいでいます。
・JDIの2017年3月期と2018年3月期のキャッシュ・フロー計算書抜粋(決算短信より)
今期も中間期は株式発行350億円でしのいでいます。
キャッシュ・フロー計算書からの単純計算だと、JDIは現状のままではアバウト年間600億円のニューマネーがないと会社を維持できない状態です。中国系企業が約600億円の出資検討と報じられていますが、1年分の会社維持資金と考えると納得できる金額。今年は既に350億円を日亜化学他向けの増資で調達しています、よて少なくとも残り250億円は必要という計算になります。
ホントはもっとしっかりとして分析しないとだめですが、ザックリと計算しても過去の状況からJDIは年間600億円のニューマネーが必要な会社、ということが分かります。
ジャパンディスプレイはチャイナディスプレイになるのか?
仮に中国系企業がJDIに600億円を出資して中国側が経営の主導権を握るようになれば、もうそれはジャパンディスプレイではなく、チャイナディスプレイです。国策のディスプレイ会社が、最終的に中国に経営を委ねる事態となれば、世界にその恥をさらすことになりますが、もう役所が新産業創造と旗を振る時代ではない、ということが証明された訳ではないかと。
ただね日経新聞(18/12/18)にこんな記事がありました。
JDIに中国資本が入れば、米企業のアップルが「液晶パネルの採用を拒む可能性がある」(JDI関係者)最大顧客のアップルに採用されなければ、再建シナリオの前提が根底から崩れる。
何だか前門の虎、後門の狼状態のJDIです。やはり民間企業が、どうにもなりませぬ、と放り投げた事業をいくら役所が旗を振ってまとめて1つの会社にしたところで、うまくはいかない、そんな感じがJDIです。できない相談だったとは思いますが、IPOの際にスパッと全株売却が最良のEXITではあったのですが、国策ディスプレイ会社のJDIであり、そんな選択肢は革新機構側として取れなかったと考えます。
足元で赤字が継続しており、金額さておきニューマネーの確保がないと更にしんどくなるJDI。ジャパンディスプレイがチャイナディスプレイとなる日が来るのか。けどその時アップルとの関係はどうなるのか、今後注目したいと思います。
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