JR九州がいよいよ2016年秋にもIPO(株式上場)の様子。注目の株価は、経営安定基金をどう見るかがポイントと言えそうです。
デザイン性の高い車両や、豪華寝台列車「ななつ星in九州」で鉄道ファンから高い評価を受けるJR九州。旅好きの管理人も、JR九州の列車に乗るの大好きです。そんなJR九州が遂に念願のIPO(株式上場)が視野入り。2016年秋にも上場のようです。
しかしながらJR九州の上場、株価をめぐっては証券会社他と激しいバトルが予想されます。その原因は、約4,200億円もの経営安定基金をどう評価するのか。これによって、JR九州の株価の見方は大きく変わってきます。
既に言われている時価総額5,000億円というJR九州の評価。PERベースで見れば、PER40~50倍となり高い株価設定となりますが、PBRベースで見れば1.5倍程度となり、他JR3社並みの妥当な株価設定。どちらの指標を見るかで、JR九州の株価は大きく見方が分かれてきます。
熊本自身の復興のシンボルにもなりえるJR九州のIPO、今回はそんなJR九州のIPO(株式上場)について取り上げてみます。尚、取り上げたデータは「JR九州(平成25年度決算について)」のデータを利用しています。(2016年9月14日更新)
・JR九州(平成25年度決算について)
PS 2016年9月15日にJR九州は東京証券取引所からの上場承認を得ました。それを受け、JR九州の予想株価等について下記で考察しています。当サイトのJR九州のIPOの最新の記事は下記となります。
概要
JR九州の決算推移
最初にJR九州の全体の業績推移を見てみます。公表されているデータをエクセルでまとめたものが下記となります。
15/3期、16/3期の実績及び、17/3期の予想決算を並べてみました。
数字的には売上は順調に右肩上がり。営業利益も順調に伸びています。詳しくは後述しますが、経営安定基金運用収益で営業利益以上の利益を生んで、JR九州の経常利益200億円前後になる、というのがJR九州の大まかな数字の状況。
経営安定基金運用益がなくても、JR九州は営業利益90億円を計上している会社ですが、もう少し中身を詳しく分解してみると、ユニークな鉄道が多く人気のJR九州といえども鉄道事業は苦労しているのね・・・、という構図が見えてきます。
実は鉄道部門は赤字のJR九州
上場を目指しているJR九州ですが、実は鉄道部門は赤字の事業。本業である鉄道部門である「運輸サービス部門」の数字は下記。
・2015年3月期売上高1,724億円-営業利益▲154億円-経常利益▲54億円
・2016年3月期売上高1,742億円-営業利益▲149億円-経常利益▲28億円
JR九州の鉄道部門、営業利益で見ると2期連続で約150億円の赤字を計上しています。経常利益ベースで見れば、15/3期▲54億円、16/3期▲28億円と、黒字化までもう少し、というところまで来ていますが、経常利益は会社内部のやり繰りが入っていると考えられるため、営業利益がよりJR九州の鉄道事業の実態を表しているのではないかと考えられます。
「ななつ星 in 九州」他、ユニークなデザインの列車等で鉄道部門で話題満載のJR九州ですが、ローカル路線も多く抱えており、鉄道事業のみでは採算が取れていないようです。
JR九州は不動産会社だった!
利益面だけ見れば、実はJR九州は不動産会社!
JR九州で一番儲かっているのは、「駅ビル不動産事業」となります。同部門の数字は下記のようになっています。
・2015年3月期売上高478億円-営業利益159億円-経常利益159億円
・2016年3月期売上高498億円-営業利益167億円-経常利益167億円
JR九州は「駅ビル不動産事業」で経常利益150億円以上を叩き出しています。
九州では有名ですが、JR九州は地域によってはマンションの地域ナンバーワンディベロッパーだったりします。JR九州の列車に乗っていると、中吊りの広告でJR九州が開発したマンションの広告をよく見ますが、JR九州にとってマンション事業はなくてはならない存在。
それと忘れてはならないのは、博多駅ビルの運営。2011年にJR博多シティとしてオープンの博多駅ビルです。主要テナントに大阪の阪急百貨店が入り、その立地の良さから、天神の百貨店街から人の流れが変わったとまで言われています。(個人的には阪急が九州でスンナリ受け入れられたのが意外でした、リスクを取った阪急百貨店は大成功ですね)
昨今の外国人観光客の増加もあり、JR博多駅ビル益々賑わっているようです。
そんな訳で、実はJR九州の屋台骨を支えているのは、年間150億円以上の経常利益を上げている、博多駅ビルとマンションディベロッパーの「駅ビル不動産事業」だったりします。
JR九州は経営安定基金の運用益がデカイ!
国鉄が分割民営化の際、鉄道事業だけではシンドイだろうから、ということで、資金の運用で利益を上げなされ、とJR各社に配分された経営安定基金。JR九州は16/3期末時点で4,267億円が存在。しかしながら既に上場しているJR東日本・東海・西日本は全額を国に返却済みです。
JR九州・四国・北海道は今も経営安定基金で資金の運用を行なっており、証券会社含め運用会社にはとっても非常に重要なお客さん。証券会社等が日参しています。JR九州・四国・北海道は運用会社としての一面も持っているのは意外では?
そしてJR九州は、この経営安定基金による運用益が16/3期は120億円。16/3期JR九州は経常利益は212億円ありますが、この運用益を除くと、実質的な経常利益は営業利益と同じく90億円。
ちなみに4,267億円の資産で120億円の利益だと、利回り約2.8%となっています(時価評価等関係なくアバウトな数字ですが)。国鉄の分割民営化当時は金利が高かったので、銀行預金に置いておくだけで、相当の運用益があったのだろうと推察されます。
そしてJR九州の上場に当たって、最大のポイントがこの経営安定基金とそこから上がってくる収益。JR九州は他のJR3社とは異なり、この経営安定基金を維持したままで上場します。
JR九州の株価、不動産事業と経営安定基金をどう見るかで大きく変わります
既に上場している、JR東日本・東海・西日本が経営安定基金を返しているのに、JR九州だけ経営安定基金を持ったまま上場するのはフェアではない、という議論もありますが、ここではその議論は横に置いておきます。(ここはホント大きなポイントなんですが、国の政策!、と言う錦の御旗が立つと、それまでです)
では、経営安定基金を持ったまま、運用益が利益の多くを占めるJR九州の株価をどう評価するのか?更に実は本業は不動産業と言える鉄道会社の評価とは?
見方としては3つあって、運用会社として見るか、不動産会社として見るか、鉄道会社として見るか。
利益面だけみると運用会社、上場している同業の株価は評価が高いので高い株価は期待できますが、そもそもJR九州は運用会社として上場する訳ではないです。
不動産会社として見るのはいいですが、不動産系の上場企業評価がイマヒトツなので高い株価は期待できません。
となると、当然ながら上場しているJR上場3社の株価指標を見て・・・、ということになるのですが、JR九州は本業の鉄道会社は赤字なので、その部分は大幅に割り引く必要が本来は出てきます。
最終的にどんな株価をつけるのかは、もう証券会社の腕の見せ所。見方によって非常に評価が分かれるJR九州の株価、果たして証券会社はどんな株価をつけるのか、非常に興味深いところです。
JR九州が上場したら時価総額5,000億円?PERだと少々高いがPBRだと他JRと同水準
九州旅客鉄道(JR九州)が6月30日に東京証券取引所に株式上場を本申請した。10月にも上場し、完全民営化を果たす。~JRグループの上場は4社目で、時価総額は5千億規模の見通し。(16/7/2日本経済新聞)
JR九州が上場すれば 時価総額5,000億円規模だそうです。
2016年3月期の当期純利益115億円なので、時価総額5,000億円ならPER43倍。PERから見ると少々高い株価=時価総額となります。2017年3月期は経常利益・当期純利益ともに減益の予想(経営安定基金運用収益の減少を予想)であり、当期純利益100億円とするとPER50倍となります。
上場しているJR3社の予想PERが10~14倍なので(JR東日本13.9倍、JR東海9.8倍、JR西日本11.6倍-2016年7月1日時点)、PREで考えれば、相当オマケをしてPER20倍としても、JR九州の時価総額は2,000~2,300億円。
一方、JR九州の純資産は7,403億円。以前あった、JR九州が上場すれば時価総額7,000億円説、はここから来ていると考えられますが、経営安定基金が3,877億円(簿価)。
PBRで考えればJR東日本1.5倍、JR東海1.5倍、JR西日本1.4倍(いずれも16/7/1終値)なので、時価総額5,000億円だろうと時価総額7,000億円だろうと、根拠がつけられなくはありません。
ただし経営安定基金3,877億円とその含み益252億円を差っ引くと、純資産は3,274億円。3,274億円×PBR1.5倍=4,911億円であり、PBRベースで見れば、時価総額5,000億円は根拠としては成り立ちうる計算となります。
JR九州は上場すると時価総額5,000億という説、利益面から見てPERで計算すると結構高い株価、一方純資産ベースのPBRで見ると妥当な水準。証券会社の苦労が垣間見える数字となっています。
JR九州の上場主幹事は野村証券他5社に決定
各証券会社が一生懸命営業を行っていたJR九州の上場主幹事、下記のように決定がなされています。
国内証券は、野村証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、SMBC日興証券の3社。
海外証券は、ゴールドマン・サックス証券とJPモルガン証券の2社。
合計5社で主幹事を行うことになります。
JR九州のIPO株応募、SMBC日興証券とカブドットコム証券に口座開設で準備を
上場に向けた主幹事が決定されたJR九州。2016年10月までのIPOが予想されていますが、JR九州のIPO株に興味を持たれている方も多いハズ。
JR九州のIPOまで、まだ日はありますが、IPO株に興味があるのであれば事前に証券口座を開設しておくのがオススメです。既に公表されている主幹事の中で、簡単に口座が開設できるのはSMBC日興証券とカブドットコム証券。
既に主幹事に決定しているSMBC日興証券。JR九州のIPOの際は間違いなく公募株が多く分配されるので、事前に口座開設してJR九州の上場に備えてはいかがでしょうか?口座開設は下記からどうぞ!
※関連記事
またカブドットコム証券の口座開設もオススメします。
三菱東京UFJフィナンシャルグループのカブドットコム証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の幹事参入銘柄は「販売委託」という形でカブドットコム証券にもIPO株が分配されることが多いです。JR九州は三菱UFJモルガンスタンレー証券が主幹事の1社となっており、カブドットコム証券にもIPOが分配される可能性は高いと考えられます
関連記事:2016年のカブドットコム証券のIPO取り扱い銘柄
IPO投資は口座開設している証券会社の数が勝負を決めます!
16/9/14追記:株式を1→500株に分割、10月25日が上場予定日
JR九州が1→500株の株式分割を行った、と報じられています。
JR九州、上場へ株を500分割 個人投資家を念頭に(朝日新聞デジタル)
いよいよJR九州の上場が目前に迫ってきました。報道によるとJR九州の上場予定日は10月25日(火)の模様。
株式分割は個人投資家が株を取得しやすくする効果があるため、多くの会社で上場前に行っているので、JR九州もイヨイヨ、ということでしょう。
東証は9月15日にもJR九州の上場を承認する見通し、とのこと。何と明日ですね(9/14に追記しています)。上場承認後、また目論見書を見て分析記事をアップしようと思います。
10月の株式市場はJR九州の上場がメインテーマになりそうですね。
JR九州のIPOまとめ
JR九州にとって株式上場はその発足時から悲願と言えるかと。その上場の実現が近付きつつあるのは、鉄道旅が好きな管理人としても、嬉しい限り。ただし上場時の株価をめぐる攻防は、非常に悩ましいものとなりそうです。証券会社の苦悩が眼に浮かぶような。
JR九州の上場は2016年10月25日が予定されています。旅や鉄道好きの管理人、非常に興味ある分野なのでJR九州を取り上げてみました。果たして上場時にJR九州の株価はどうなるのか。非常に興味深い所です。JR九州の上場の成功を祈念しています。
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