12月15日にプーチン大統領訪日、ロシアの経済を支える原油価格について

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 2016年12月15日にロシア・プーチン大統領が初来日。安倍総理の故郷である山口を訪れ、日ロ首脳会談が予定されています。

 北方領土返還への期待が高まりますが、そう一筋縄ではいかないと思われますが、若干視点を変えて、ロシア経済を支えているのって何かご存知ですか?実は中学校の地理でも習っているハズですが、原油です。ロシア経済は原油価格で支えられている、と言っても過言ではありません。

 日本人にとって、ロシア=原油、というイメージは殆どありませんが、ロシア経済を支える原油価格について、プーチン大統領の訪日を機会に、改めて振り返ってみました。

ロシアは原油や天然ガスが経済を支えている

 日本の場合は自動車や機械といった工業製品を輸出して外貨を獲得して経済力を蓄積している訳ですが、12月15日に訪日するプーチン氏が大統領を務めるロシアでは、主力輸出品は何か?
 ロシアの工業品・・・、あまりイメージ湧きませんね。ウォッカ???、経済を支える程の輸出品じゃありません、軍用品?半分当たりですが、もう一声。

 答えは、原油及び天然ガス、です。「GLOBAL NOTE」が発表の世界の原油(石油)生産量 国別ランキング、は下記のようになっています。

1位サウジアラビア568,493
2位米国567,250
3位ロシア540,725
4位カナダ215,464
5位中国214,560
※2015年の数字、単位:千トン

ロシアは世界第3位の石油生産国。ロシアで生産された石油は主にヨーロッパに輸出されており、ヨーロッパ経済を支えています。

ロシア政府の財政に占める原油・ガス収入に対する割合は50%以上にも達している

 ロシアが海外に輸出した原油やガスの収入はロシア政府の予算に回されています。

 そして驚くことなかれ、2014年のロシア歳入全体の約51%は石油・ガス収入に拠っています!
国際協力銀行のレポート、より)

 ロシア政府の予算の半分が原油・ガスからの収入、と聞けば、ロシアの国のイメージがガラッと変わりますね。そりゃ中東の国のように、国家収入の殆どが原油収入という国と比べれば、また全然違いますが、ロシアは原油とガスの国なのか・・・、と思わざるを得ません。

 そして簡単に考えれば、原油価格が上がればロシアという国は豊かになり、原油価格が下がれば使える予算が少なくなりロシアの懐は寒くなる、そんなことが分かります。

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約10年の原油価格の推移

 下記が2003年以降の原油価格(WTI)の月足チャートとなります。

16-12-7原油価格-月足チャート

 右肩上がりに上がった原油価格が140ドルを超えて、その後でズドンと下がって、今は若干値段が戻ったものの、以前の高値に比べるとまだまだ安い値位置にいる、ということが分かります。

ロシアの過去のイベントを原油価格チャートに入れてみる

 上記のチャートに今回のプーチン大統領訪日に関係しそうな過去のイベントを入れてみたのが下記。

16-12-7原油価格-月足チャート2

 前回、ロシア大統領が訪日したのは1998年4月のエリツィン大統領。実はすでにその頃エリツィン大統領はウォッカの飲みすぎで当事者能力が無くなっているのでは?、と言われていました。ただし橋本首相とエリツィン大統領の関係は非常に良好で、北方領土返還の期待が非常に高まった時期でもあります。

 原油価格も低迷しておりロシア経済も苦境にあえいでおり、経済支援を背景に北方領土返還交渉を、と言える環境にあった、ということが分かります。

 そして今回訪日するプーチン大統領がロシア大統領に就任したのは2000年5月。既に1月にエリツィン大統領から後継指名を受けていましたが。
 プーチン大統領は2000年から一貫してロシアの最高権力者の地位にありますが、原油価格チャートとプーチン年表を重ねてみると面白いです。プーチン大統領誕生の2000年は原油価格が30ドル付近だったものが、その後原油価格はうなぎ上り。2008年6月には140ドル台に到達。
 その後、リーマンショクを経て原油価格は低迷しますが、現在の原油価格50ドル近辺というのも、プーチン大統領誕生時の30ドル近辺と比べれば、まだ1.5倍以上の価格となっています。

 前回、1998年4月のエリツィン大統領訪日時の原油価格は20ドルを切っていますが、現在は約50ドル。ロシア経済、1998年と比べるとまだ全然体力がある状態になっています。

 よって原油価格という観点からは、前回のエリツィン大統領の訪日の際に比べると全然ロシア経済にも余裕があり、経済協力を背景にロシアに北方領土返還を求めるというのは、一筋縄ではいかないんじゃないかな、というのが正直な印象です。

 交渉って、相手が困っている時に助け船を出すのが、一番安く且つ感謝される訳ですが、現在のロシアの状況を考えると、決して困っている訳ではありませんので。

そうは言っても余裕はないロシアの懐事情

 確かに1998年当時と比べれば体力のあるロシア経済ですが、そうは言っても原油価格が140ドル台の時には大盤振る舞いできた予算も、原油価格が50ドル程度にとどまっていては、大盤振る舞いできる状況ではありません。

 ロシアは極東開発を進めたい、という意向はありますが、財布に余裕がないため、それ程進んでいるとは言えません。

 最近思ったのですが、寒い地域の開発はどうしてもお金がかかるんじゃないか、ということ。JR北海道が殆どの路線が赤字路線だった、というニュースを見て驚いたのですが、寒い地域って税金を投入しないと開発どころか維持もできないかも。

 ロシアじゃないですが原油や天然ガスが採れるから採算的には問題なし(中国東北部も似てますね)とか、にしん長者が生まれる等で漁業が活性化するみたいなのがなければ、寒い地域の開発は金がかかります。

 管理人、寒い地域の生まれではないので実感を持って語ることはできないのですが、札幌ドームも補助金で維持している現状を考えると寒い地域に金がかかる問題、ロシアとの経済協力として北方領土問題を考える時に欠かすことのできない視点ではないかと思います。

まとめ

 本当はロシアの通貨ルーブルについて語れると面白いのですが、残念ながらさすがにルーブルの知識は持ち合わせていません。せっかくプーチン大統領が訪日するので何か書こうと思いつき、原油価格について書いてみました。

 で原油価格は今後どうなるかと言えば・・・、先日OPECがまさかの減産合意に至っているので、今後上昇の可能性があります。ただしアメリカのシェール業者は損益分岐点が約50ドルと言われているので、原油価格が現状より上昇すればシェールガス増産により供給が増え、エネルギー価格の下落圧力が必然的にかかってくるので、実は原油価格は現在の約50ドルを当面維持する可能性もあります。

 実は為替や株式市場に大きな影響を与えている原油価格。日頃はガソリン価格程度しか気にしないかもですが、タマに気にして見ると相場の転換点等が見える時がありますよ。まぁ原油価格が分かれば株や為替が分かる、とまではさすがに言えませんが、ある程度の相関をもって動いているので、気が向いた時に原油価格もチラッとご覧ください。相場を見るのに新しい視点が得られますので。

 ロシア・プーチン大統領の来日は12月15日。ちょっと注目してみようと思います。

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