2011年に株式の非上場化を行い、株価も無ければIRも無いレンタルDVDチェーン運営のTSUTAYA(ツタヤ)を運営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)。
非上場化してもツタヤは普通にあるし、最近はこじゃれた本屋も運営しています。そして気が付けばツタヤが運営する図書館が問題に。
そんなCCC、今の業績ってどうなのさ?、ということで分かる範囲でCCCの業績を調べてみました。
やはり非上場化って一筋縄ではいかないのかぁ。まだ結論を出すには早いのですが、CCCの試行錯誤はまさに真っ最中、という状態です。
概要
ツタヤを運営のCCCは2011年に非上場化、株価600円でMBO
ツタヤを運営するCCCは2011年に経営陣によるMBOにより東証1部の上場を廃止し、非上場会社となっています。約700億円をかけて同社の創業者でもある増田社長が非上場化を実行。非上場化の際の株価600円というのは、株価のプレミア部分が少ないため取締役会はMBOに賛成せず中立という、結構珍しいケースとなりましたが、無事に非上場化は実行されました。
「CCCが増田社長によるMBOで非上場化へ。DCF法の下限下回る買収価格に他の役員は「中立」と判断停止」(東洋経済ONLINE)
そうかもうCCCが上場廃止になって5年がたつのか・・・、時がたつのは早いものです。
最近は図書館問題で注目されるツタヤ
ツタヤの本業はレンタルDVDやCDなのですが、最近は図書館の受託運営が何かと注目を浴びています。
最初に運営を開始した佐賀県武雄市のツタヤが運営する図書館、オープン当初は好意的な報道が多かったのですが、時間がたつにつれ+市長が変わって、何だか報道のトーンがすっかり変わってしまいました。
そして第2弾で受託した神奈川県海老名市。こちらもオープン当初のゴタゴタが報じられていました。
さらに愛知県小牧市ではツタヤ図書館の誘致が住民投票で反対が過半数を上回り、もう最近はツタヤ=図書館、というイメージになっていますが、実際はレンタルDVDが中心の会社です。ここをお忘れなきよう。
最近のCCCの業績を調べてみました
非上場化しているCCC。業績の開示の必要はないので、サイトにIRのページはありません。けど探してみたらCCCの決算情報ありました。これが見つかったので、当記事を書こうと思った訳です。
どういうカラクリかと言えば、CCCは東証マザーズ上場のフォトクリエイト(6075)を持ち分適用会社にしています。そしてそのフォトクリエイトがCCCの決算書を非上場親会社の決算、ということで開示しています。
・カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 2015/3期決算
・カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 2014/3期決算
そしてネット上には2011/3期までのCCCが上場廃止までの決算短信等は残っています。
2012/3期、2013/3期と2期分は数字が分かりませんが、2011/3期→2014/3期・2015/3期と数字を並べることで、オボロゲながらでもCCCの業績推移及びそこから何か見えてくるのではないかと、考えました。
CCCの最近の業績推移
上場廃止直前、そして最近のCCCの業績数字を並べたものが下記となります。
上場時と非上場化後と、売上は確かに伸びています。しかしながら、本業の稼ぐ力を示す営業利益は140億円レベルから100億円レベルと約3割減少。本業のレンタル事業での利益が出にくくなっていると考えられます。
非上場化は短期的には収益の出ない事業をじっくり育てる、というのが大義名分で、CCCもその例にのっとり非上場化を実行していますが、現段階ではまだCCCは雌伏の時。売上は上がってきているので、これに利益が付いてこれば=ちゃんと利益として回収できれば目標達成、というステージにはいます。
CCCの業績推移、面白いのは2015/3期に営業外利益を85億円も計上。更に特別利益76億円(一方で特別損失も23億円)計上と、2015/3期は確かに経常利益ベースで増収を果たしていますが、これらの特殊要因がなければ、利益は横ばい。
さて2015/3期にCCCに何があったのか?株の売却でもあったのか、と思わないでもないですが、さすがにここから先を調べるにはデータ不足。
ともあれCCCの業績推移を見て分かるのは、
①売上は上場していた時より伸びている
②本業のもうけを示す営業利益は上場時より約3割減っている
③2015/3期は一時的な要因で利益がかさ上げされている
、と言うことが分かります。
CCCの貸借対照表(B/S)を比べてみる
次にCCCの直近2期分の貸借対照表を見比べてみます。
CCCはMBOの際に約700億円を使っているので、B/S上の「投資その他資産」が膨らんでいるのはやむを得ません。(20年かけて償却することになります)
ただしポイントは2014/3期の「投資その他資産」1,021億円から2015/3期は1,385億円に+365億円増加している点。
CCCは前期(2015/3期)に思い切った投資を実行しています。
ちなみに資金は銀行からの借入れ。2014/3期は借入金ゼロですが、2015/3期は借入金が約700億円増加しています。CCC、相当思い切ってます。
あと面白いのはCCCは株の含み益を相当持っていて、2015/3期に「その他有価証券評価差額金」を323億円計上。CCCは上場している時から投資に積極的な会社として有名でしたが、現在はその投資が見事に花を開いている段階となっています。
CCCの決算書から見えること、試行錯誤の真っ最中
情報が限られていますが、CCCの3つの決算書から分かることは、CCCは今後の事業展開のための試行錯誤の真っ最中、ということ。
CCCは営業利益が約3割減の中、やり繰りして経常利益・当期純利益を確保しつつ、積極的な投資を行っています。
本屋事業や図書館事業で注目を浴びることの多いツタヤですが、どちらの事業も大きく儲かるという事業とは考えられず、利益貢献は話題性に比べれば限られるのではないかと。
時まさにネットフリックスが日本に上陸して、いよいよ動画配信サービスが普及して、DVDのレンタル屋が無くなってしまうのか?、という時代に入りつつあり(とは言え業界的には当初予想より大幅に遅れているのですが)、CCCは本業のレンタル事業の減少を食い止めるために試行錯誤をしている状態ではないかと、考えられます。
ツタヤのライバルのゲオも150億円ベースであった経常利益が100億円代に落ちてきているので、CCCだって本業は似たような状態と考えられます。(ただしCCCはFC主体、ゲオは直営店主体という違いはありますが)
ゲオは2015年に入って株価は急伸しています。。。
ツタヤの図書館事業、赤字を垂れ流す余裕は無い状況
正直な所、それほど利益が出ると思えないツタヤの図書館事業。現在は初期投資の段階ということで、赤字か収支トントンではないかと。(ツタヤの図書館事業、どこかの雑誌で赤字、と見た記憶があります)
そんな状態で結構な叩かれ方で、ご苦労様、と外野からは思ってしまいます。
図書館のコストを削減を狙って図書館の運営の民間委託=ツタヤに委託、という流れなんでしょうけど、元々自分達=役所でやると利益が出ないから、民間に任せれば利益が出るって、それはムシのよすぎる話ではないかなぁ、と個人的には思いますが、どんなもんでしょ。
本業がジリ貧状態のCCCだって、利益が出るまで悠長にやりますわ、と言ってはいられないので、ツタヤの図書館事業、契約が残っている間は続けますが、新しいのはもうやりません+契約が切れたらもうやりません、何てリスクもあるのでは。
CCCが儲かって儲かって・・・、という余裕のある会社ではないことは、決算書見れば分かりますので。
TUSTAYA百貨店が大阪の枚方に完成予定
何とツタヤが運営する百貨店が来年(2016年春)大阪の枚方市にオープン予定。
NHKの「プロフェッショナル」でCCCの増田社長の回の時に、百貨店オープンプロジェクトの裏側、として放送されていました。
具体的にどこに出店、と放送されてはいませんでしたが、大阪の郊外と放送されていたのと、あーこの風景は京阪沿線だ、という管理人のかつての感覚と、放送見ていたら「枚方」という看板が見えたので、間違いないでしょう。
ネットで調べると、近鉄百貨店が2012年に閉店していて、その土地建物(近鉄保有分)をCCC増田社長の関係者が取得、とあったので、ビンゴと思われます。
そうですか、ツタヤが百貨店の運営ですか。場所は京阪の枚方市駅かぁ、うーむあまり具体的なイメージないな・・・。いずれにせよツタヤの枚方の百貨店、ツタヤの今後の命運を握る存在となりそうです。
まとめ
正直な所、管理人は株式の非上場化がうまく行くケースは非常にレアケースと思っています。詳しくは以前ソフトバンクを例に書きましたので、ご興味あればそちらをご覧ください。定期テストないと、普通の学生は勉強しませんって。
関連記事:ソフトバンクも検討の非上場化がうまく行かない簡単な理由
CCCの非上場化が成功したか、そうでないかの答えを出すのはまだ早いと思いますが、決算書から売上増と営業利益の減少は見て取れるので、正念場にいるなぁ、と思います。今後、これまでに撒いた事業のタネが本当に収穫できるかどうかにCCCはかかってくるのではないかと。
図書館事業が色々と言われるツタヤですが、図書館事業がそんなに大儲けできる訳はないので、やはり今後のポイントはレンタル事業につぐ事業が本当に立ち上がるかどうか、という所になりそうです。
え?非上場化の際に同じ説明があった?
そうなんです、だからCCCの悩みは本当に深いんです。まだその解が見つかっていないんですから。
果たしてCCCは見事にこれまで撒いた事業のタネが花開いて(枚方の百貨店等)、再びIPOの門を叩くことが出来るのか?ツタヤ=CCCの挑戦、そろそろ結果が求められる時期です。非上場化で成功のケースとなるよう、期待しています。
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関連記事:余っているTポイントで株が買えるSBIネオモバイル証券、配当株投資にオススメ