日本マクドナルド売却へ、売却先候補は高い株価に難色を示す可能性が

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アメリカのマクドナルド本社が日本マクドナルド(日本マクドナルドHD:ジャスダック2702)の売却方針へ。鶏肉事件以降、一向に業績回復の見込みが立たないマクドナルド、遂にアメリカ本社が決断を下したようです。

 本社の持つ約50%の株の内、最大33%を売却方針で、既に投資ファンドや商社に売却を打診している様子。早ければ2016年1月中旬にも売却先が決まる様子。

 しかしながら、意外な所に問題が。個人株主が多く、配当目的で株を売らないことで有名な、日本マクドナルドHD株、業績が悪化しても株価は高値で安定中。高い株価に対して売却候補先が難色を示す可能性が。マクドナルド株は、既に名前の出ているベインキャピタルや三井物産が買っていくのか、それとも別の第三者場買っていくのか。それともうまくまとまらずに頓挫してしまうのか。
 今後の売却交渉の行方に注目です。(2016年1月12日更新)

日本マクドナルドの売却を遂にアメリカ本社が決断

 本決まりではないですが、ここまでニュースが出ているので、アメリカのマクドナルド本社が日本マクドナルド売却の方針を決めたのは間違いなさそうです。

「日本マクドナルド売却 米本社、ファンドなどに打診 株最大33%分 」(2015/12/22日本経済新聞)

 鶏肉事件以降、一向に業績回復の兆しの見えない日本マクドナルド(以下、マクドナルド)。遂にアメリカ本社が売却の決断をしたようです。

 簡単に言えば自力再建をあきらめました、ということ。約50%の保有株の内、最大33%の売却の予定ということで、完全撤退する訳ではなさそうですが、以後アメリカ本社はロイヤリティー受け取りが主眼になり、日々のオペレーションや日本法人のマネジメントは買収先にお任せします、というスタンス。

 アメリカ法人としてはこれまで丸抱えで日本法人を運営してきましたが、完全に白旗、ということです。

 ただし、運営からは撤退するものの、今後マクドナルドを運営する会社やファンドから、ロイヤリティーを徴収するので、上りの絶対量は減りますが(今は上がり自体が出ていませんが・・・)アメリカ法人としてはリスク無い形で収益を得られる形となるので、実はアメリカ本社としてはそれほどリスクがない所がミソです。

15.6.1アメリカ国旗
アメリカ本社は日本マクドナルドを売却方針

日本法人の再建は時間切れ

 アメリカ本社としては本社から人を派遣して、マクドナルドの再建を支援してきた訳ですが、完全に時間切れということでしょう。

 外資系企業は数字に厳しい世界。以前書きましたが、これまでのマクドナルドの売上推移のグラフを見ると、外資系でなくても何とかしなきゃだめだよね、という低空飛行でマクドナルドは推移してきました。

 そして遂に再建は時間切れを迎えた、という訳です。

 しかし売却ですかぁ。以前、マクドナルドは倒産はしないだろうなぁ、ということで下記記事を書いています。

 売却、という選択肢も実はあって、マクドナルドは台湾では現地FCに売却を行っていますが、さすがにマーケットの大きい日本はそれはしないだろう、と思っていましたが、見事にハズレました。

 日経の報道によると、マクドナルドにおける日本市場の扱いは、アメリカ本社への利益貢献度が10%程度の「基礎的市場」と位置付けられており、「基礎的市場」では店舗運営は現地企業が運営する企業が多いようです。ちなみに「基礎的市場」が属する国や地域は、日本、中東、中南米、インドが該当しています。(日本経済新聞2015/12/22)

 人口増加が見込まれるインドも「基礎的市場」というのは意外な感もありますが、少子高齢化が進み、鶏肉事件の傷も癒えない日本では、マクドナルドの運営は現地の会社に任せる方針のようです。

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マクドナルド売却の意外なハードル、マクドナルド株の高さ

 アメリカ本社が株を売却する、と方針を定めた日本マクドナルドHD。売りたいと思うのはある意味で株主の勝手ですが、買うor買わないは相手があってこそ。

 実はマクドナルド売却で問題になりかねないのが、日本マクドナルドHDの株価の高さ。

 日本マクドナルドHDは株主優待目当てで個人の方が多くの株を持っており、一旦株を持ったらなかなか株を売らない、という特徴があります。

 そんな訳で業績が悪化しても、マクドナルドの株価はあまり下がっていません。通常であれば業績悪化→株価下落、という流れになって、株価が下がった所で再生ファンドが買収→業績を回復させて株価が上昇した所で株を売却、という流れになるのですが、マクドナルドの場合は業績悪化はしても、あまり株価が下がっておらず、特にファンド勢としてはマクドナルド株を買うメリットが見いだせない状態。


日本マクドナルドHD株価5年分推移(ヤフーファイナンスより)

 5年分で見るとマクドナルドの株価、逆に上がっているし・・・。

 ちなみにファンド勢で言えば、外食産業への投資はベインキャピタルが得意としています。ベインの投資先スカイラークは見事に上場しました。恐らくマクドナルドの売却も、今後ベインキャピタルの名前が出てくるのでは?

 事業会社が買うのであれば、事業上のシナジー効果を期待、ということで例えば商社がマクドナルドの株を買うケースも想定されますが、マクドナルドのケースでは少なくともファンド勢は、マクドナルド株の投資はうまみが多い案件とは言い難い状況です。

 業績が悪化しても株価が下がらないマクドナルドのような株は貴重な存在ですが、一転会社を売るという話になると、業績悪化時の株高がネックになる可能性がある訳で、株の世界はホント不思議なもんだよなぁ、と思います。

 尚、マクドナルド株の今後の見通しについては、下記記事をご覧ください。

「日本マクドナルドHD株価の今後の見通し」

15.12.24日本マクドナルド株価2-10年月足-min

日本マクドナルドHDの上場は維持される見込み

 今回売却方針が示された日本マクドナルドHDはジャスダック上場企業(2702)。

 同社の株主構成は概算で、アメリカのマクドナルド本社49%・個人42%・その他9%という比率。今回アメリカのマクドナルド保有49%の内の最大33%が売却、ということなので、大株主の変動はあれども、上場廃止の要件(大手の完全子会社になる等)に抵触する訳ではない為、今後もジャスダックへの上場は維持される見込みです。

 株式の取得先が、日本マクドナルドHDは上場廃止!、と決断すれば話は別ですが、それをしない限りは上場は維持されます。

15.6.1計算機-min
株価でひと悶着ある可能性が

日本マクドナルドの売却先候補、ベインキャピタル、三井物産、ペルミラの名前が挙がる

 アメリカ本社の売却方針が示された日本マクドナルドHD、売却候補先が報じられています。

米マクドナルドが、株式の売却先として打診したのは投資ファンドや総合商社。具体的な名前は明らかにされていないが、米ベインキャピタルや三井物産の名前が挙がっている。(ダイヤモンド・オンライン

 やはりベインキャピタルの名前が出てきました。そして総合商社としては唯一、三井物産が関心を示しているようです。そしてその後に、ペルミラというイギリスの投資ファンドもマクドナルドの買収候補先として名前が挙がってきました。

 ベインもペルミラも世界を股にかけている投資ファンド。ベインは日本ではスカイラークの買収そしてIPOが有名、ペルミラは”あきんどスシロー”を傘下に収めています。

 ただし百戦錬磨の経験を持つベインとペルミラは、流石にマクドナルド側の言い値で日本マクドナルドに出資することはなさそうです。何せマクドナルドの株価、前述の通り相当高いですし。

 三井物産は資源・エネルギーが中心で外食関係は得意ではありません。業界事情を知らない会社が高値で会社をM&Aしてゆく、という過去M&A界隈で何度も繰り返されてきたパターンとなるのか?それとも勝利の方程式を自ら見つけることができるのか。
 
 けど三井物産といっても、日本マクドナルドに出資しても原材料の仕入れ等の商社のビジネスで美味しい部分を、マクドナルド本社がガッチリ押さえているようだと、日本マクドナルドに出資する意味は殆どありません。

 ま、マクドナルド本社もFCの親(フランチャイザー)として、商流等の美味しい部分だけ握っておいて、面倒な店舗周りの部分だけを他社に押し付けようとしている訳で(それも有料で)、ムシのいい話ではありますが。

 2016年1月11日時点でマクドナルドHDの時価総額約3,400億円であり、33%の出資だと資金が約1,100億円必要となります。この価格が高い、という話になると、現在のマクドナルドの市場でついている株価より下げて株を買う必要が出て来るために、交渉は面倒なことに。そもそも、売る側に株の時価以下にして売るには、余程の理由と事情が必要です。今の所、アメリカ本社は時価を下回る価格で日本マクドナルドHDを手放す、とまで腹は括っていません。

 実は、株主優待制度の廃止、をやってしまえば、一気にマクドナルド株は下がる可能性がありますが、さすがにアメリカ本社は自分の保有している株の評価を自ら下げるようなバカなことはしないと思われます。

 マクドナルドの再建が進まない中、売却交渉に時間がかかるとマクドナルドの状況は着実に悪くなっていく可能性もります。売るなら売る・売らないなら売らない、でアメリカのマクドナルド本社は早いうちに決断しないと、何をするにせよタイミングを失してしまう可能性があります。

FC会社再生のモデルケースとなるか?

 個人的に以前から注目しているのが、マクドナルドはFC会社再生のモデルケースとなるかどうか。
 マクドナルドは原田前社長が経営の際に店舗のFC化を積極的に進めていて、現在の店舗のFC比率は6割を超えています。

 FC店は確かにうまく回転している時はFCの親(フランチャイザー)はリスク少なく高収益となりますが、一旦逆回転が始まると、FCの子(フランチャイジー)はどこまで行っても他人の会社なので、言うことを聞いてくれません。何をするにしても、親が子供にお願いするしかなく、機動的な店舗運営ができなくなります。

 FCの子が再生しないと日本マクドナルドの復活もありえず、過去大規模FC店の再生って聞いたことがないので、マクドナルドの再生、どうなっていくのか非常に興味深い所。
 直営店なら簡単なんです。経営主体変えて、社長や幹部も総とっかえで、本社の方針!、ということで決めて実行できるので、結果はさておき。
 FC店主体だと、本社は決めてもそれをするかどうかはFCオーナーがご判断、ということになるので。

 FC店主体で店舗を今も増やしているコンビニ業界が、マクドナルドの再生の成否を固唾を飲んで見守っているような・・・。

まとめ

 考えてみれば今回のマクドナルドのアメリカの本社の方針、時代の針を元に戻す、という判断になります。日本のマクドナルドは、かの藤田田氏が築きあげたある意味で帝国とも言える存在でしたが、藤田田氏亡き後、アメリカ本社主導で経営を行い、そして現在の姿になっています。

 藤田体制も後半戦はシンドイ時期がありましたが、それでも日本最強の外食企業を育て上げた藤田氏。時を経て、アメリカ本社は再び日本マクドナルドの運営を第三者の手に委ねようとしています。

 正直株価の面で、まだ紆余曲折ありそうな日本マクドナルドの売却ですが、早ければ1月中旬にも売却候補先が決定される模様。そして売却決定の暁には、それでも一つの時代の終了、ということになるのかもしれません。
 
 未だにタマにマクドナルドのハンバーガー食べに行っている管理人、マクドナルドの行方は非常に気にかかる所。今後も注目して行きたいと思います。

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