千趣会は2年で合計約200億円の赤字計上を予定し、リストラと社長交代を発表しました。
ただし盤石な財務体質を誇る同社は、200億円の赤字を計上しても、倒産リスクはなく、立て直しのための体力を持っている状態。
しかしながらこのままジリジリと体力を消耗してしまう可能性も残されています。立て直しのための試行錯誤事態は続け来た千趣会、今後の立て直しは成功するのか、今後の行方が注目されます。
概要
ベルメゾンの千趣会が2期連続大赤字でリストラを発表
カタログ通販『ベルメゾン』を展開の千趣会<8165>が、2期続けての大赤字となる見通しを発表。それにともない、社長交代及びリストラを発表しました。
カタログ通販市場は既に数年前から徐々にシンドイ状況となっており、大手のニッセンは既にセブン&アイHD<3382>の傘下入りしています。更に言えばセブンの傘下に入ったニッセンはセブングループ内の足を引っ張る存在となっており、カタログ通販ビジネス自体が時代の転換点を迎えている状態です。
ニッセン以上に体力のあった大手の千趣会ですが、市場環境はニッセンと同じであり、前期(2017年12月期)は当期純利益で100億円を超える赤字を計上しています。
100億円オーバーの赤字で底入れかと思いきや、何と当期も100億円近い赤字の計上が見込まれる事になり、リストラそして社長交代との流れになりました。
ちなみに前期と当期予想は下記の数字です。
2017年12月期 売上高1,260億円、経常利益▲42億円、当期純利益▲111億円
2018年12月期(予想) 売上高1,125億円、経常利益▲60-▲75億円、当期純利益▲90-▲103億円
現状では千趣会の倒産リスクは殆どない、実質的には無借金会社
2期続けて約100億円、合計200億円の赤字を計上する千趣会ですが、会社として大丈夫なのか?、とは誰しも思う所。普通の会社なら200億円も赤字を出せば、アッというまに倒産の憂き目にあいます。
しかしながら千趣会は過去から盤石な財務基盤を有する会社として知られた存在であり、200億円の赤字を出しても少なくとも倒産云々のリスクは殆どありません。
2018年12月期Q3(1-9月)時点では、資産合計767億円に対して純資産合計368億円。自己資本比率48%を誇っています。
借入金が短期と長期と社債を合わせて161億円に対して、現預金118億円と投資有価証券76億円有しており、ほぼ無借金会社と言える状態です。
Q3累計で当期純利益▲46億円であり、最終的には約▲100億円にまで拡大する予定のため、もう少し財務状態は悪化しますが、それでも全然倒産するとかしないとかのレベルではありません。
以前に比べると正直財務状態もやせ細ってはいますが、会社の存続自体に黄色信号、という状態ではありません。
そんなに余裕はないけれど、まだ立て直しのための時間と体力は充分残されています。
・千趣会の月足チャート、2001年の最安値目指して下落中
「画像出典:マネックス証券/日本株取引ツール トレードステーション」
マネックス証券Tradestation
※関連記事:マネックス証券のトレードステーション発表会に行ってきました
amazonやzozoだけが赤字の原因ではないカタログギフトの衰退
カタログギフト市場の衰退は、amazonやzozotownの成長で語られる事が多いのですが、それは原因の1つではあっても、決定打ではありません。
ニッセンがセブン&アイの子会社となったのが2014年。もうその頃からニッセンの経営はシンドイ状況であり、確かにamazonは成長過程にあったものの、まだ現在ほどamazonが家庭に浸透していた訳ではありません。
同業のベルーナ<9997>は今も100億円以上の営業利益を計上していますし、フェリシモ<3396>も苦労しながらも黒字は確保、スクロール(8005:旧ムトウ)はネット通販中心にビジネスモデルを変えて営業利益ベースでの黒字は10億円レベルで確保。
千趣会もDeNA<2432>とモバイルEC事業一緒にやったり等、このままじゃダメだよね・・・、と試行錯誤を長らく続けているのですが、正直成功に至っているとは言い難い状態。
下手に体力があったのと、図体が大きいので過去の遺産を簡単には切れなかったのと両方あると考えますが、いずれにしても千趣会も新規事業等々、様々な取り組みは行ってきたものの、実になっていません。
2期続けて100億円レベルの赤字を計上することになる千趣会、今後再起の道を歩むことになるのか注目されます。
ワタベウェディングが関連会社だがMBOの動き
千趣会の試行錯誤の一環として海外ウェディング大手のワタベウェディング<4696>を同社は持ち分法適応会社としています。
正直ワタベも以前の飛ぶ鳥を落とす勢いは全くありませんが(少子高齢化と若者が結婚式にお金使わなくなった)、それでも黒字は維持。千趣会グループとして考えれば、ワタベは数少ない黒字部門な訳ですが、そんなワタベがMBOでの独立話が出ています。
千趣会はワタベに対しグループ会社と合わせて34%を出資しており、簡単にハイソウデスカ、とは言えない立場。こんどワタベのMBOがどうなるか分かりませんが、事業立て直しに注力したい千趣会としては、二正面作戦を強いられることになります。詳しくは別途記事を作成したので下記の記事をご覧ください。
関連記事:減価償却費から見えるワタベウェディングのMBOの可能性、実現は千趣会しだい
グループとして取り込んでしまうのか、ワタベの株価次第では手放してしまうのか、それは分かりません。しかしいずれにしても、本業立て直しの最中にワタベ問題を千趣会は抱えることになっています。
まとめ
amazonの急拡大が、様々な業種の企業に影響を与えている事は間違いありません。カタログ通販市場はamazonの浸食の影響が強い業界ではあるものの、各社の業績悪化が全てamazonの理由で片付けられるほど、世の中は簡単ではありません。
2期続けて100億円レベルの赤字を計上する千趣会ですが、業界でも財務体質が盤石な企業として知られており、合計200億円の赤字を計上しても財務的には問題はありません。
ただし逆に考えれば、だからこそ色々やりながらもここまでズルズルと来ている面は否定できません。
体力のある千趣会、このままジリ貧状態となるのか、その体力にモノを言わせて着実に復活の道を歩むことになるのか、今後のその行方が注目されます。
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