イタリア予算案に対するEUの制裁は2019年春以降に山場を迎える

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2018年11月、EUの視線は既にイギリスからイタリアに移りつつあります。2019年はイタリア問題がクローズアップされる可能性大です。

既に予算案を巡り対立が始まっているEU対イタリア。イタリアに対して全体未聞の制裁をEUは課すことになるのか?その場合は2019年春以降に山場を迎えます。

2019年はイタリア問題が金融市場を揺るがす可能性があります。

既にEUの注目はイタリアからイギリスへ

イギリスがどんな形でEUを去っていくのか、イギリスではメイ内閣がブリグジットの方法を巡ってゆれています。どのような形であれ2019年3月にイギリスはEUから離脱することが決まっています。

関連記事:ブレグジットの日程を確認、2019年3月29日が離脱予定日

イギリスの騒動にEU側も振り回されているかと思いきや、実はEU側はブリグジットはある意味で終わった話となっています。淡々と交渉している、そんな感じ。もう出て行く相手に時間使ってられませんわ、といった状態。

そしてEUの視線は既にイギリスから、身内のイタリアに注がれています。2019年はEU内でイタリアがクローズアップされることになりそうです。


・EU内では既にイギリス問題は終わった話になりつつあります

予算案でEUにケンカを売っているイタリア政府

EU加盟国は政府予算についてEUの欧州委員会から承認を得る必要があります。EU統合の深化の中で、各国が別々に持っていた金融の権限は既に欧州中央銀行(ECB)に概ね集約済みですが、次の段階として財政も方向性としては統一しようという流れが背景にあるための措置です。

EU加盟国は税収以上に政府支出を行う放漫財政について、欧州委員会の管理下で厳しく制限されています。とはいえこれまで話し合いの下で、それでも融通を利かせた運営がなされていたのですが、来年度予算案についてイタリアが政府支出を拡大した、欧州委員会にケンカを売った予算案を提出。

関連記事:史上初!イタリアの2019年予算案がEUから再提出を命じられる、今後罰金の可能性も

既にイタリアは公的債務残高130%とEU基準の60%以下を大きく上回っている中で、更なる財政支出を計画しており、欧州委員会としてはイタリアの予算案を認める訳にはいきません。

欧州委員会の定めた財政ルールに違反する国には制裁金を課すことができますが(制裁金支払いの実効性があるかどうかは別問題ですが)、欧州委員会はイタリアの予算案について11月21日に制裁手続き入りは正当化される、と判断。ここから先、いよいよEU側とイタリアのバトルが激化することになります。

制裁発動は2019年春から夏

イタリア政府に制裁金の発動を行う場合でもまだ、一定のプロセスを経る必要があります。

①欧州委員会が制裁手続き入りは「正当化される」と判断→この段階をクリア
②欧州委員会がEU財務省理事会に制裁の手続き入りを勧告(12月予定)
③制裁手続き入り及びイタリアへの是正勧告(1月予定)
④勧告に従わない場合は警告
⑤警告にも従わなければ制裁発動(2019年春から夏)

上記の流れとなります。

制裁発動について日経新聞には春とありましたが、ブルームバーグ(英語版)を見ると夏となっています。いずれにしてもこのままEU側とイタリアがチキンレースを進めれば、EU史上初の財政ルール違反による制裁金がイタリアに課されることになります。

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折れる気配の無いイタリア政府

イタリアは前回の選挙で反EU派が勝利して政権交代がなされています。反EU派が予算組んでいるため、当然債務削減型の予算が組まれる訳は無く、このまま制裁金発動までイタリア側は折れる気配がありません。

よって2019年はEU側とイタリア側でどのような展開となるのか、非常に注目されます。

正直、制裁金が課されたところで、イタリア側が“払いませんよ”と言ってしまえば制裁金事態は何の効果もありません。ただしEU側は制裁金だけではなく欧州投資銀行の融資削減、国債発行計画の監視等の制裁金以外の罰則を用いることもできます。制裁金はセンセーショナルで話題となりますが、金融機関の足腰が弱いイタリアとして困ってしまうのは国債発行の制限等の措置となります。

金融機関の足腰が弱いイタリア

イタリアの金融機関は不良債権の比率が高いことで知られています。イタリア第3位の銀行、モンテパスキの不良債権問題がクローズアップされたのはまだ2年前。そこから大幅に状況が改善されている訳はなく、世界的に景気がよく金融機関の不良債権問題が一時的に小康状態になっている、そんな状態です。

関連記事:世界的に銀行株が下落している件、イタリアのモンテ・パスキの株価は赤信号

さらに良くないのがイタリアの銀行は、高利回りの自国イタリアの国債を相当量保有している部分。既にイタリア国債の利回りはジワリと上昇していますが、国債の利回り上昇=国債価格の下落であり、ただでさえ不良債権比率の高いイタリアの銀行の体力を国債価格の下落は徐々に奪っている状態です。

現段階では問題となっていませんが、今後イタリア国債の利回り上昇が更に進むと、イタリアの金融機関の体力問題が間違いなくクローズアップされます(それでも日本ではそんなに大きくは報じられないかもですが)。

イタリア政府としては反EUで政権をとった手前、対EUに予算案で強硬姿勢を取っていられますが、金融機関が体力的に政権についてこられない可能性が高いです。そうなった時に政権側がEU側に歩み寄るのか、それでも金融機関の破綻覚悟で突っ走るのか、大きな決断を迫られることになります。

2019年はイタリアの予算問題を契機に、イタリアの金融機関の問題がクローズアップされる可能性があります。

まとめ

2018年のEUはイギリスの離脱を巡ってひと悶着ありましたが、金融市場という観点ではそれほど大きな問題が生じることなく終わりつつあります。

しかしながら2019年はイタリアの予算問題を契機に、金融面で大きな問題が生じる可能性があります。

2018年は世界的に景気が良い状況が続きましたが、さすがのアメリカも11月は株価下落に見舞われており、2019年もこのまま株価上昇が継続する保証はありません。

そんな中で2019年はイタリア発で金融問題が生じる可能性があります。まだ可能性の段階ですが、ともあれ欧州では既に視線はイギリスからイタリアに移っており、どうやらイタリア側もEUに折れる気配はないため、2019年イタリアを巡るニュースが多くなるのは間違いなさそうです。

既にスタートしているEUとイタリアの対立、今後どんな状況になるのか注目したいと思います。

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