2016年はトランプ大統領の誕生で世界が驚きましたが、2017年も世界的に見れば選挙の年と言えます。そんな中で注目されるのは4~5月に行われるフランス大統領選挙。
2017年のフランス大統領選挙はルペン氏に誰が対抗するのか、そしてルペン氏はどの程度得票数を伸ばすのか、という部分が注目点。フランスの主要政党は、決選投票の際に反ルペンで一致することでほぼ合意をしており、ルペン氏の大統領当選の可能性は低いと考えられますが、逆に言えば誰が大統領になるか分からない状態となっています。
2017年4月23日に第1回投票、5月7日に第2回投票(決選投票)が行われるフランス大統領選挙。日程や制度、そして候補者の顔ぶれ、そして見所について解説致します。
概要
2017年はフランス大統領選挙の年
2017年はフランスの大統領選挙の年となります。現職のオランド大統領は社会党出身ですが、経済運営に失敗し更に女性スキャンダルにも見舞われ、近来稀に見る不人気大統領となってしまい(支持率数%)、現職大統領で再選は認められているにもかかわらず、早々不出馬を表明。
フランス大統領の任期は5年で、再選は2期までとなっており、最長10年間その職に留まることができます(アメリカは任期4年で再選は2期まで)。尚、現行制度は2000年に定められており、それ以前は任期7年で再選回数制限無しという、制度上は皇帝陛下を作り出すことが可能だったという、不思議な制度を持っていた国だったりします。
オランド大統領の前任のサルゴジ大統領も1期で退任していますが、再選を目指した大統領選で現オランド大統領に決選投票で敗れています。現職大統領を破って大統領に就任したオランド大統領でしたが、見事に国民の期待を裏切る結果となり、そして大統領選に再出馬することもできず、大統領職を去ることになります。
2017年のフランス大統領選挙日程と選挙制度
2017年のフランス大統領選挙の日程は下記となります。
・4月23日 第1回投票
・5月7日 第2回投票(決選投票)
※JETRO「世界の政治・経済日程(2017年)」
フランスの大統領選挙は2回投票制となっています。1回目で過半数を得る候補者がいない場合、上位2人で決選投票を行い、勝者を決めます。
フランスの大統領選挙は、2回目の決選投票が一番盛り上がります。戦後の大統領選挙において、ポエール氏(大統領代行から出馬)、ジスカールデスタン氏、サルゴジ氏と3名の現職大統領が決選投票で敗れており、現職大統領でも再選に向けたハードルが非常に高いのがフランス大統領選挙となります。(アメリカ大統領選の場合は、再選を目指す現職が圧倒的に有利。ブッシュ元大統領のお父さんが、クリントン氏に再選を阻まれたのは、非常に珍しいケース)
2017年も絶対的な有力候補不在で決選投票までもつれる可能性が高いフランス大統領選挙ですが、候補者がほぼ出そろっていますので、次に出馬を表明している主な候補者をご紹介。
2017年フランス大統領選の候補者
本命不在で混沌としている2017年のフランス大統領選挙、主な候補者は下記の4氏。
国民戦線党首・マリーヌ・ルペン氏(48歳)
初の女性大統領を目指しているのがルペン氏。女性ではありますが、国民戦線は極右政党でゴリゴリのフランス至上主義者。フランスの女性版トランプとも評されています。
極右政党の党首でルペン氏の反感も強いのですが、指示する声も多く、世論調査では支持率No1。良くも悪くも、強力な支持層を獲得しており、決選投票への進出はほぼ確実。
国民戦線はルペン氏の父親のジャン・マリー・ルペン氏が設立。父親のルペン氏の頃から国民戦線は戦う極右政党として鳴らしており、自身も大統領選に度々出馬しています。その後、娘のルペン氏に代替わりをしてから(娘が父親を追放!)、戦う政党から若干ソフト路線にシフトしたことで、国民戦線及びルペン氏(娘)への支持が広がっています。
ルペン氏が2017年のフランス大統領選挙の台風の目であることは間違いありません。
共和党・フランソワ・フィヨン氏(元首相・62歳)
サルゴジ元大統領時代の首相。フランスの代表的政党の共和党からの出馬となります。
敬虔なカトリック信者として知られ、身綺麗さが売りで、何もなければ大統領当選確実、と言われていましたが、出馬早々政治資金スキャンダルに見舞われています。勤務実態がないのに妻に多額の給与を支払った、とのスキャンダルがいきなり飛び出して、完全に出鼻をくじかれた格好となっています。
雰囲気は良くも悪くも”ザ・政治家”という方ですが、スキャンダルが出る前まではフランス国民からの信頼度も高かっただけに、2017年の大統領選挙が更に混沌とする事態となっています。
無所属・エマニュエル・マクロン氏(元経済産業デジタル相・39歳)
オランド政権で経済産業デジタル相を務めた若手ビジネスマン。議員経験のないままで大統領選に出馬しており、何と言っても39歳の若さ。
フランスの超エリート校・国立行政学院(ENA)を卒業の後、会計検査官→社会党入党を経て投資銀行(ロスチャイルド銀行)に勤め副社長格にまで昇進。
社会党の予備選に参加せず、自らが率いる「前進!(En Marche!)」というグループをバックに大統領選に挑みます。
ちなみに29歳の時に高校時代の先生であった24歳年上の女性と結婚しており、今後話題になりそう。
社会党・ブノワ・アモン氏(元国民教育相・49歳)
オランド大統領を輩出した社会党からの出馬はアモン元国民教育相。しかし近代で最も不人気な大統領となってしまったオランド大統領のイメージが悪すぎ、今回は社会党は全く影の薄い存在となっています。
当選の可能性は非常に低いと考えられます。
2017年フランス大統領選挙の予想、ルペン大統領は誕生の可能性は低い
世論調査でトップを走るルペン氏は、決選投票への出場はほぼ決定しています。であれば、ルペン氏がフランス大統領就任となるかと言えば、その可能性は低いと言わざるを得ません。
極右政党を率いるルペン氏、一般市民及び主要政党からは完全に距離を置かれており、主要政党は基本的にはルペン氏を大統領にしないこと、という点においては意見の一致を見ています。よって決選投票となった場合は、主要政党支持者の票の多くはルペン氏以外の候補者に流れることとなります。
歴史を振り返れば、訳の分かんないことが発生するのがフランスの歴史。フランス革命で民主主義の旗の下にギロチンを使いまくったり、フランス革命で民主主義を手にしたのにアッサリとナポレオン万歳と叫んでみたり、第二次世界大戦はサクッとドイツの前に降伏したり等、フランスの歴史って何があるか分からない面があるので、ヒョットしたらルペン氏が大統領当選となる可能性は無きにしも非ずかも。
ただし、今回はさすがにルペン氏の大統領当選はないかと。なぜって、ルペン氏はEUからの離脱を訴えているから。
EUの状態を考えてみると、フランスはEUから少ない負担で(負担をしているのは当然ドイツ)多くのメリットを享受している国であり、実は一番EUに残るメリットがある国だったりします。賢いフランス人はそんなことは百も承知なハズで、イギリスに倣ってEU離脱だ!、というのは難民問題はありますが、さすがに受け入れられないのでは?
イギリスは通貨・ユーロも採用しておらず、EUの中では中途半端な立場の割には負担が多い、という国でしたが、フランスは負担が少ない割には役得が多い国なので、さすがにEU離脱の支持は広がらないかと。移民問題の一点突破なら、ルペン氏が大統領当選の可能性はあるかもしれませんが。
ルペン氏の大統領当然でEU崩壊、そしてユーロ(EUR/USD)は1.000割れ!、という記事も見ますが、国力でドイツに離されつつあり、景気も低迷しているフランスが、どうにか大国の地位にとどまっているのはEUのお陰です。面子にこだわりつつも交渉上手なフランス人、そう簡単にEUから出ていくことはないのではないかと。
まとめ
日本人の感覚だと、フランス=白人の国、というイメージですが、いざフランスに行ってみると印象が一変します。フランスって他民族国家だったのか、というのをパリの街を歩くと、ホント実感できます。
以前フランスに行った際に、飛行機の中で読んでいたのは下記。
本の中のフランスの光景と、目の前のフランスの光景のギャップにエラク驚きました。ちなみに上記の「マリー・アントワネット」はフランス王家の視点でフランス革命を見る本として、非常に面白いです。世界史好きとしては、非常に楽しめた本でした。
そんな訳でフランスも、今や多民族国家となっておりトランプ大統領誕生ならぬ、ルペン大統領誕生の土壌は間違いなく存在しています。
さりとてフランスの場合、フランス第一主義と言うのは簡単でも、じゃあ一国で何でもできるのかと言えば、ドイツと一緒に運営しているEUの下で仕事をするのが一番お得感があるので、背景の状況がトンランプ氏(=アメリカは持ち出しが多い!)とルペン氏(=フランスはEUからの恩恵を被っている)では大きく異なっていると言えます。
フィヨン氏の例もありますが、まさに選挙は一寸先が闇なので、最終的な結論は決選投票を見ないと分かりませんが、今回ばかりは番狂わせはなさそうです。ただし、ルペン氏以外の誰がフランス大統領となるのかは現段階では全く予想ができません。
ルペンか反ルペンかという争点も面白いのですが、誰が反ルペンの旗頭となるのか、という点にも注目するとフランスの大統領選挙、より楽しく見ることが出来ます。
2017年のフランス大統領選挙は4月23日と5月7日。あわてず騒がず様子を見ていきたいと思います。
PS どうやら無所属のマクロン氏の勝利の可能性が高そうです
2017年フランス大統領選挙の予想、マクロン氏の勝利の可能性大
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