タカタのエアバッグ問題、ホンダの堪忍袋の緒が切れて新局面へ

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 実は2008年から続いているタカタのエアバッグ問題。昨年(2014年)にアメリカの議会の公聴会で話題となった後も問題は継続。

 しかしながら、遂に長年の大口取引先であるホンダがタカタの製品を使用せず、と判断。これまで歩調を合わせてエアバッグ問題に対応してきた、タカタとホンダ。ホンダは遂に堪忍袋の緒が切れてしまったようです。

 これまで盟友関係とも言えたタカタとホンダですが、ホンダがタカタ製エアバッグ使用中止によって、タカタのエアバッグ問題は新しい局面を迎えようとしています。

タカタのエアバッグ問題とは?年表で振り返ってみる

 タカタのエアバッグ問題。昨年の2014年から大きくマスコミで取り上げられるようになりましたが、実は問題としては2008年から続いて現在に至っています。下記にこれまでの経緯を年表に記してみました。

2000~2002年9月→同期間にタカタのアメリカ工場及びメキシコ工場で作られたエアバック部品(インフレーター)が、高温多湿の地域で長期間に渡り使用された場合、車が衝突してエアバッグが作動した時に、異常な破裂が生じて金属片などが飛び散り、乗員がけがをする恐れがある、と報告。
2008年11月→ホンダが米国でリコール
2009年→タカタ製のエアバッグが原因で2件の死亡事故が発生(米国)
2013年4月→トヨタなど4社でリコール
2014年6月→追加リコール
2014年7月→ホンダ車で死亡事故(マレーシア)
2014年8~11月→追加リコール
2014年11月→米国議会での公聴会
2014年12月→米国議会での公聴会
2015年6月→米国で7人目の死亡事故発生
2015年6月→タカタの謝罪会見
2015年11月→日本国内で日産の車(エクストレイル)でタカタ製エアバックによる軽傷事故発生
2015年11月→タカタが米国の制裁金支払いに同意、ホンダが新車種でのタカタ製エアバック搭載停止を決定

※管理人の手元の資料等でまとめました

 タカタの制裁金支払い及びホンダの取引停止については、下記の毎日新聞の記事が詳しいです。

『「ホンダ:「タカタのエアバッグは使用しない」』(毎日新聞)

 アメリカ及びマレーシアでの死亡事故発生により、高温多湿地域での使用の際の不具合、ということで長らくタカタは抗弁してきた訳ですが、日本国内で日産車の事故があった後のタイミングで、遂に米国の制裁金支払いにも同意し、全面降伏、そしてホンダからも取引停止を告げられる事態となりました。

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タカタ製エアバッグのリコールの歴史は案外長い

タカタの歴史、ホンダが頼み込んでエアバッグの量産を依頼

 タカタは1993年に高田武三氏が滋賀県彦根市で繊維会社として創業。その後、シートベルトの開発に進出し成功。新幹線に乗っていると滋賀県内でタカタのキレイな工場を見ることができますが、創業の地が滋賀県だったんです。
 そんな中、1980年代後半、ホンダはエアバッグの開発に際し、量産をタカタに依頼。しかしながら2代目社長の高田重一郎氏が、リスクが高い、として一旦断ります。そこを何とか・・・、とホンダがタカタに頼み込んで最終的にタカタがホンダ向けのエアバッグを量産し始めた、というのが歴史の流れとなります。
 尚、タカタは2006年11月に東証証券取引所市場第1部への上場も果たしています。

 歴史的に見れば、ことエアバッグに限ればホンダとタカタは切っても切れない関係。アメリカの議会での公聴会等、ホンダがタカタとセットで対応していたのも、単なる部品の仕入れ先とは違う歴史的経緯があった上でのことです。

 タカタとホンダは資本関係はあるものの、ホンダがタカタに1.2%出資しているのみの関係。
ホンダが必要以上にタカタを庇うと、いくら過去の経緯があるとはいえ、株主代表訴訟で自らに延焼しかねないリスクをはらんでいます。(株主代表訴訟については、下記をご覧ください)

 いずれにせよ、ホンダとタカタは二人三脚でエアバッグの開発・量産を進め、ホンダはタカタのエアバッグ搭載率50%となり、そしてタカタは世界のエアバッグシェア20%を握るまでになり、リスクを取ったタカタが見事にハイリターンを得た形となっていました。

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ホンダの堪忍袋の緒が切れた?タカタは米国への制裁金85~240億円の支払いに同意

 ホンダのタカタ製エアバッグの使用中止、原因は、「エアバッグの欠陥問題を調査する過程でタカタから提出された資料を調べたところ、一部のデータで虚偽の報告が見つかった(毎日新聞)」、とされています。
 データの虚偽というと、VWの排ガス不正問題と似たものを感じてしまいます。

 この部分をそのまま読めば、もう付き合い切れないとホンダの堪忍袋の緒が切れた、と言うことではないかと。
 資本関係も無い中、恩義もあるので色々と助けてやったのに虚偽データを出していたんかい!、とホンダがブチ切れてしまった、ということ???

 タカタが米国の制裁金支払いに合意した、ということは基本的に全面降伏な訳で、全面降伏の上にかけがえのない事業パートナーからそっぽを向かれたというのは、余程ホンダがタカタに対して腹に据えかねた、と考えられます。

 タカタに米国政府から課される制裁金は約85~240億円。
仮に240億円となれば、米国が1社に課す制裁金としては過去最大の金額となります。

 ただ米国政府への制裁金はあれど、盤石な財務体質を誇るタカタはすぐに倒産等の事態には陥りません。2015/9中間期の数字、確かに赤字ですが、まだ余裕のある状況。(詳しくは下記をご覧ください)

 ただし、タカタにとって売上の多くを占めるホンダとの取引停止、これは正直キツイです。これまでリコール問題が長く続いてきた中でも、ホンダ他との自動車メーカーとの取引は継続できていたタカタ。今の所、国内メーカーで取引停止に至ったのは今回のホンダだけのようですが、ホンダがなくなれば売上の大幅減は避けられない状況。
 
 タカタ問題、ホンダの取引停止によって新たな局面を迎える可能性が高そうです。

 尚、ホンダの株価は下記の記事が詳しいです。

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ホンダがタカタにソッポを向いた?

初動をしっかりしていれば・・・

 先にタカタのエアバッグ問題の年表を掲載しましたが、タカタのエアバッグ問題自体は2008年から今に至るまで7年以上継続しています。一旦、2008年のリコールで納まったかに見えましたが、2013年に再度リコールが発生、そして次々とリコールが発生し、今の事態を招いています。

 詳しい事情は分かりませんが、最初の2008年のリコールの際に全てを解決していれば・・・、と外野からは思ってしまいます。結局、そこで完全解決とならず、ズルズルと原因究明が進まず、当初は熱帯地域だけの事象、と言っていたのに、遂には日本でも日産車(エクストレイル)で怪我人が発生、そしてホンダとの取引停止、という経過になっています。

 日本国内での日産車の事故が、タイミング的には最後のトドメとなっていますが、実際そうだったのか、それともタマタマこのタイミングだったのか、ここは非常に興味深い所です。

 いずれにしても、あの時もっとしっかり対応していれば・・・、というケースに該当するのではないかと。VWの排ガス不正問題も、何度か引き返す機会はあったようですし・・・。

まとめ

 ホンダという後ろ盾を失ったことにより、タカタのエアバッグ問題は新しい局面を迎えることになりそうです。
 以前は万全の財務体質を誇ってきたタカタですが、これまでのリコールの損失に加え、今後ホンダとの取引が無くなることにより、売上自体が大きく減少する可能性も高くなっています。

 実はタカタの株価自体は、夏頃から停滞状態に入りどうにか持ちこたえていましたが、ホンダとの取引停止というファンダメンタル要因が発生することで、タカタの株価にも大きな影響を与える可能性も。タカタの株価詳細は以前記事にしているので、下記をご覧ください。(若干古いですが、それ程株価は動いていないので、まだ使えます)

 果たしてタカタは今後どうなっていくのでしょうか?自動車業界、海外はVWの排ガス不正問題の行方から目が離せませんが、国内はタカタのエアバッグ問題、そしてタカタ自身の問題が今後注目されそうです。

 タカタ問題、今後も注目して行きたいと思います。

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