AIIBの出資国と出資額・出資比率が決定、ドイツが悩ましい立場に

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 AIIB(アジアインフラ投資銀行)の出資国と出資額・出資比率が決定し、2016年1月16日に発足。どうやらAIIBの中身と現在の環境を考えるとドイツが非常に悩ましい立場に置かれています。
 最終的に日本は参加を見送ったAIIB。日本とすれば、アジア開発銀行(ADB)という日本からトップを送り込んでいる似たような組織があるので、別にもう一つ同じような組織を作らんでよし、と考えれば、AIIBへの不参加はある意味で合理的な判断。

 中国は随分と日本にラブコールを送ったようですが、日本はAIIBに参加せず、と意思決定したので、ごっそりと参加表明をしたヨーロッパ勢とともに中国はAIIBを発足させました。

 果たしてAIIBは見事にその役割を果たすことができるのか?それとも懸念されていたように中国政府の財布になってしまうのか?AIIBの行方、今後にこそ注目です。(2016年1月19日更新)

AIIB(アジアインフラ投資銀行)の参加国

 参加表明をしてもなかなか署名をしない国があったりもしましたが、蓋を開ければちゃんと参加表明57ヵ国がAIIBに参加。下記57ヵ国でAIIBは2016年1月16に発足しました。

    アジア地域からのAIIB参加国

  1. 中国
  2. カンボジア
  3. ラオス
  4. シンガポール
  5. ベトナム
  6. マレーシア
  7. インド
  8. モンゴル
  9. パキスタン
  10. スリランカ
  11. インドネシア
  12. バングラデシュ
  13. カザフスタン
  14. ミャンマー
  15. フィリピン
  16. タイ
  17. ブルネイ
  18. ネパール
  19. ウズベキスタン
  20. モルディブ
  21. タジキスタン
  22. 韓国
  23. キルギスタン
  24. グルジア
  25. アゼルバイジャン共和国
    中東地域からのAIIB参加国

  1. イラン
  2. アラブ首長国連邦(UAE)
  3. オマーン
  4. クウェート
  5. サウジアラビア
  6. ヨルダン
  7. カタール
  8. トルコ
  9. エジプト
  10. イスラエル
    ヨーロッパ他からのAIIB参加国

  1. ルクセンブルク
  2. イギリス
  3. スイス
  4. ドイツ
  5. イタリア
  6. フランス
  7. マルタ共和国
  8. スペイン
  9. オーストリア
  10. オランダ
  11. フィンランド
  12. デンマーク
  13. ノルウェー
  14. ロシア
  15. スウェーデン
  16. アイスランド
  17. ポルトガル
  18. ポーランド
  19. ブラジル
  20. 南アフリカ
  21. オーストラリア
  22. ニュージーランド

AIIB主な不参加国

  1. アメリカ
  2. 日本
  3. 北朝鮮
  4. 台湾
  5. カナダ
  6. メキシコ
  7. アイルランド
  8. ベルギー
  9. ギリシャ

 参加国とは逆に、こちらは主なAIIB不参加国。(アジア、ヨーロッパ地区のみ)

 日本とアメリカのAIIB不参加は有名ですが、その他には北朝鮮、台湾、カナダ、メキシコ、アイルランド、ベルギーが不参加。

 北朝鮮は中国と現在仲がよろしくないようですが、それを如実に表しているかも。
 台湾は1つの中国と言っている手前、スタート時の参加は遠慮してもらったようです。ただし台湾の総統選挙で民進党が政権を奪取し、親中国の国民党が政権から離れました。国民党政権であれば第2陣で台湾はAIIB参加、とスムーズな流れの可能性がありましたが、政権交代によって台湾のAIIB加盟問題、今後不透明な部分があります。

 アメリカのお隣の、カナダとメキシコはアメリカの影響か不参加。カナダはAIIBへの参加を模索中とも報じられていましたが、第1陣での参加は見送りました。

「カナダ、AIIB参加を「積極的に検討」 ロイター報道」

 ヨーロッパはアイルランドとベルギーが我が道を行きAIIB不参加。中国との取引あまりないし参加するメリットなさそ、ということでしょうか。参加するのタダではありませんので。

 そして他の機関にお金出す余裕のないギリシャも不参加。ただ後述しますが、ギリシャがAIIBの駆け引きの材料になっている可能性も。

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AIIBの各国の出資額と出資比率

 AIIB、参加表明国による出資額の調整が行われていましたが、下記の金額がスタート時点での出資額・出資比率(小数点第2位切り捨て)となるようです。

  1. 中国29,780百万ドル(29.7%)
  2. インド8,367百万ドル(8.3%)
  3. ロシア6,536百万ドル(6.5%)
  4. ドイツ4,484百万ドル(4.4%)
  5. 韓国3,838百万ドル(3.8%)
  6. オーストラリア3,691百万ドル(3.6%)
  7. フランス3,375百万ドル(3.3%)
  8. インドネシア3,360百万ドル(3.3%)
  9. ブラジル3,181百万ドル(3.1%)
  10. イギリス3,054百万ドル(3.0%)

 資本金の合計1,000億ドルでスタートするAIIB、ベスト10の出資国と出資比率はは上位となります。
 AIIB創設を提唱の中国は圧倒的1位の29,780百万ドル。出資比率約30%の29.7%。以下インド、ロシアと続きますが、AIIB域外のメンバーではドイツが4,484百万円と全体では4位で域外トップ。ヨーロッパ勢が参加の切っ掛けを作ったイギリスは総合10位。同じ域外の9位ブラジルよりわずかながら下となっています。

中国政府に恩を売って保険を掛けたとも言われるイギリス

 ヨーロッパ諸国のAIIB加入の流れを決定付けたイギリスのAIIB参加。ただし、イギリスは流れは作ったけど、お金はなるべく使わなった訳であり、さすがうまいなぁ、と思います。さすがはジェームス・ボンドの国。
 
 そのイギリス、国民投票の結果次第ではEUを離脱してしまう可能性が。世界の為替取引の中心地ロンドンを抱えるイギリス、仮にEU離脱となりロンドンの為替取引市場としての地位が低下しても、ヨーロッパの人民元取引の中心地として生き残るための保険として中国政府に恩を売った、とも伝えられています。

 事の真偽はさておき、世界の為替取引の中心地ロンドンを抱えるイギリスにとって、新たに勃興しつつある人民元の取り込みは必要不可欠。イギリスのEU離脱があろうとなかろうと、為替取引の中心地としての機能強化、という観点から見ると、ヨーロッパ諸国がAIIBに参加する流れを作って中国に恩を売ったイギリスの動きは、非常に理に適っていると言えます。

<関連記事>
ギリシャの次はイギリスのEU脱退問題が浮上の予定

人民元がIMFのSDR採用、イギリスが一番得をした?

AIIBは中国が拒否権を有する組織に

 中国が提唱して設立を決めたAIIB。当然、中国が主導して設立しており、出資額も29,780百万ドルとトップ。

 そしてAIIBでの重要な議決事項は75%以上の賛成が必要、となったようです。中国の出資比率は29.7%。75%以上の賛成がないと重要事項は決められない、ということは、中国には拒否権がある、と言うことです。

 約30%の出資でAIIBの生殺与奪の権を握ってしまった中国。日本が参加していたら、日本政府は大慌てだったのではないかと。

AIIBがギリシャ問題に関与?ドイツが悩ましい立場に

 
 実はこのAIIBを利用してギリシャを救済しよう、という案があるとかないとか。ギリシャはAIIB不参加国ですが、参加させてAIIBの融資1号案件をギリシャに行うというウルトラC。中国とロシアが噂の元だそうですが。

 噂の真偽はさておき、困った立場なのはドイツ。中国との商売に一枚嚙みますか、とAIIBに参加したはいいが、ギリシャ問題がどうにもならず、仮にAIIBでギリシャ支援となればドイツの面目丸つぶれですね。裏ワザで、EU経由では支援しなくてもAIIB経由で支援した、と開き直ることもできなくはないのですが、さすがにそれはなさそう。

15.6.17悩み-min
ドイツの悩みは深いようです

 ギリシャ問題は下記で以前取り上げています。合わせてご覧ください。

「ギリシャ危機2015、デフォルトとユーロ離脱は既定路線?」

 

署名を先送りにした7ヵ国もAIIBに参加

 当初、6月29日(火)に署名されたAIIBの設立協定。下記の7ヵ国は署名せず、動向が注目されましたが7ヵ国全てAIIBに参加しました。

 フィリピン、デンマーク、クウェート、マレーシア、ポーランド、南アフリカ、タイはAIIB設立協定に署名せずでした。

 フィリピンは中国と領土問題をまさに抱えているので、フィリピンの対応に注目が集まっていましたが、参加を判断しています。

AIIBは中国の財布という懸念を払拭できるのか?

 遂に発足したAIIB。参加を見送った日米両政府は、運営の透明性を確保できない、と言って参加を見送っていますが、コレって要は、AIIBは中国の財布になってしまうんでないの?、と心配しての事。

 AIIBは中国の約30%の出資で拒否権付き。簡単に言えば、レバレッジを掛けて約300億ドルの出資で1,000億ドルのお金が使えるようになった、とも言えるため、AIIBで中国が好き勝手にできてしまう余地は十分にあります。

 また中国の外貨準備高に穴が開いており、AIIBの資金はその穴埋めに使われるのでは?、という説もあります。

 どうにか設立にまではこぎつけたAIIBですが、共産党の一党独裁という特異な国家が中心となり設立した国際金融機関でもあります。今後どう運営がなされていくのか、中国政府の鼎の軽重が問われます。

まとめ

 中国を中心に57ヵ国で発足したAIIB。

 中国経済の失速が鮮明になりつつある中、AIIBは中国経済浮上のキッカケとなりうるのでしょうか?

 イギリス始め各国の思惑もありながらの船出となりましたが、幸いなことに日本はAIIBに参加しておらず、高みの見物が可能。まぁ、まずはお手並み拝見、でよいのでは。

 中国が中心になって設立した国際金融機関という、歴史的な組織、果たして見事な成果を残すことができるのか?それとも、やはり・・・、という結果になってしまうのか。

 今後のAIIBの活動にこそ注目したいと思います。

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