アップルが次世代のアイフォンに採用を決定した有機ELディスプレイ。既にスマホに有機ELディスプレイの搭載の機種は存在していますが、アップルの採用により今後一気に普及する可能性が。
かつて夢の技術と言われ各社が開発に鎬を削った有機ELディスプレイ。今や夢の技術ではなく、現実の製品となり普及は目前。そんな有機ELディスプレイに関連する上場銘柄を調べて一覧表を作成してみました。(2016年9月1日更新)
概要
有機ELディスプレイとは、簡単に
そもそも有機ELディスプレイとは?
極々簡単に言えば、有機ELディスプレイはバックライトのいらないディスプレイです。液晶ディスプレイ(以下、液晶)は画面を表示するのにLED等のバックライトが必要不可欠ですが、有機ELディスプレイ(以下、有機EL)は色を出す分子自体が発行するのでバックライトを必要としません。よって有機ELは、理論的には液晶に比べ遥かに薄く、遥かに軽くできる可能性を有しています。
ちなみに有機ELは自ら発光するので、自発光、と業界の方は表現することもあります。
現在は韓国勢の独壇場
既に有機ELディスプレイ自体の製品化はなされていますが、現状では韓国勢の独壇場となっています。
サムソン電子は自社のスマホ向けに、大量に有機ELディスプレイを出荷済み。
一方のLGディスプレーは大型TV向けの有機ELディスプレイを発売済み。LGの有機ELディスプレイはTV向けの製品が注目されますが、実はアップルウォッチに使われている有機ELディスプレイはLG製。
品質に厳しいアップルですが、LGの有機ELディスプレイはアップルのお眼鏡にかなう程の品質を誇っています。
有機ELディスプレイの課題→価格が高い
既にLGディスプレイが大画面の有機ELディスプレイを発売しており、有機ELディスプレイ自体は製品化がなされています。しかし普及にまで至っていない最大の理由は値段の高さ。
値段が高い、と一言で言っても実は複合的な理由があるのですが、主な理由を下記にピックアップしてみました。
①量産技術が未確立→本命の印刷方式での量産化が未だなされていない(現在は半導体と同じコストの高い蒸着方式で製造)
②発光材料が高い→実は発光材料が結構します。今は様々なメーカーの参入で値段も下がってきているようですが、かつては金より高かったんです、ホント。
③量が出ていない→まだ普及の手前なので仕方ありません
有機ELの生産コスト削減の決定打として、印刷方式での生産はもう10年以上前から言われていますが、未だ印刷方式での量産技術の確立がなされていません。簡単に言うと、有機EL材料をインクジェットプリンタのような仕組みでもって、基盤に塗る技術です。微細の有機EL材料を、寸分の狂いもなく基盤に塗る(置くと表現してもいいかと)技術、そう簡単にできるものではなく、ナノテク技術が話題だったころ、様々な企業が開発に励みましたが、ついぞ”成功した”という話は耳にしていません。よって、有機素材を噴霧上にして基盤に蒸着させるという、コストはかかるものの半導体製造で技術が確立されている方式で、有機ELディスプレイは製造されています。
またあまり指摘されませんが、実は有機ELディスプレイの命とも言える、発光材料=有機素材の価格もバカになりません。バカにならないどころか、以前は金の価格以上と言うバカ高かいものだったんです。この素材部分は参入メーカーの努力によって随分と価格が下がったようですが、それでも元の値段が値段であり、有機ELディスプレイ普及の際は、最も利益の出る部分と考えられます。
そしてやはりまだ有機ELディスプレイは量が出ていません。ただしこの部分はアップルが次世代のアイフォンに有機ELを採用すると発表しており、時間の問題で普及していくと考えられます。
有機ELディスプレイ関連銘柄
では有機ELディスプレイの関連銘柄について、上場企業をピックアップしてみます。
パネルメーカー
ジャパンディスプレイ(JDI:6740)
「画像出典:マネックス証券/日本株取引ツール トレードステーション」
マネックスTradestation
※関連記事:マネックス証券のトレードステーション発表会に行ってきました
アップルとの取引が売上の約半数以上を占めており、必然的に有機ELも取り組みをせざるを得ないJDI。日本の有機ELパネル製造の本命中の本命です。
ただし足元の経営状態は結構シンドイ状況で、単独での有機ELの投資ができるかどうかは、結構微妙です。
シャープ(6753)
シャープと言えば液晶ですが、パネルメーカーとして有機ELの研究も行っております。シャープ買収を買収した台湾のホンハイは、シャープで有機ELパネルを製造する、と表明しています。ただし、ホンハイはジャパンディスプレイに有機ELディスプレイ事業を一緒にやろう、と持ち掛ける等、まだ紆余曲折がありそうな予感。うまくいけばシャープは一躍日本の有機ELパネルメーカーに飛躍する可能性がありますが。
以前は自社で有機ELを行っていたパナソニックですが、かつての技術資産はJDI関連会社のJOLEDに継承。LGから大型有機ELパネルを仕入れ、2017年より自社ブランドで有機ELテレビを発売と報じられています。
発光材料メーカー
昭和シェルとの合併を巡って、創業家と経営陣が対立中の出光興産ですが、早くから有機ELの発行材に力を入れており、その分野では知る人ぞ知る存在です。
有機ELの発光材料は国内メーカーが非常に強い分野。既に有機ELの量産を行っているLG電子ではありますが、日本の発光材料メーカー無しに有機ELの製造はできない、とも言われています。
出光興産はガソリンスタンドのイメージがありますが、古くから有機ELの発光材料の研究に注力しており、業界内では非常に有名な会社です。家電量販店で目にするLG製の有機ELディスプレイにも、出光のロゴの入ったシールが貼ってあります。
製造装置メーカー
子会社のキャノントッキで有機EL製造装置を開発(トッキは以前独立系の上場会社でしたがキャノンがM&Aで子会社化)。キャノントッキは有機ELの蒸着装置をほぼ独占的に手がけています。
既存の半導体製造装置メーカーが有機EL製造装置を手がけるケースが多いですが、平田機工の株価の上がり方は驚きです。完全に有機ELが材料になっているようです。
蒸着マスクメーカー
有機ELディスプレイ製造には、発光材料を基盤に付着させるのに蒸着マスクという微細の穴が開いた部材が必要不可欠となります。この蒸着マスクを開発しているのが下記3社。
フィルム基盤
液晶ディスプレイはガラス基板の上に回路を形成していましたが、有機ELディスプレイは折り曲げ機能を視野に入れており、今後樹脂基盤への移行が見込まれています。
まとめ
有機ELディスプレイ関連銘柄、というとディスプレイを作るメーカーのイメージが強いですが、パネルを作る会社だけではなく、有機ELの材料を作ったり、有機ELディスプレイを作る製造装置もあります。有機ELは材料が特殊なので、材料メーカーの役割が非常に大きいという部分が、液晶ディスプレイとは大きく違う部分となっています。
正直有機ELディスプレイの製造となると、韓国勢との投資体力勝負になり消耗戦を覚悟する必要があり、そう簡単なビジネスではありません。(ディスプレイ事業は、既に開発力というより投資力という体力勝負の世界になっていますので)ただ、視野を広げて見ると有機EL関連銘柄、日本にも結構あります。
アップルによる有機EL採用で本格的な普及の見込まれる有機EL、果たしてどの会社が有機ELの時代の波に乗って行くのか?今後注目が集まりそうですね。
トレーダーズ・ブレイン・マーケットの相場解説と銘柄分析が無料でも役立つ
株の銘柄紹介サービスはたくさんありますが、トレーダーズ・ブレイン・マーケットのサービスは無料でも充分役立ちます。無料サービスに登録すると朝の場が始まる前と、夕方の場の引けた後で相場の解説がメール配信されます。継続的に読むことで、足元での相場状況をしっかり把握することに繋がります。
またテクニカルアナリストによる銘柄分析サービスも、初回登録時のポイントを利用することで利用可能です。塩漬けになっている銘柄をどうすべきか悩んでいるようなら、相談してみてはいかがでしょうか?
銘柄ピックアップのサービスは当たり・ハズレのリスクがありますが、相場解説と銘柄分析サービスの利用は無料でリスクもありません。一度ご利用されてみてはいかがでしょうか?
有機ELの関連記事
・アイフォンに有機ELの採用決定、悩ましいジャパンディスプレイ(JDI)
・ジャパンディスプレイ(JDI)が倒産の危機?産業革新機構に支援要請へ